研究課題/領域番号 |
15K13932
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
大久保 雅章 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40223763)
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研究分担者 |
黒木 智之 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00326274)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プラズマ加工 / 表面処理 / 静電気 / 接着 |
研究実績の概要 |
ガラスとフッ素樹脂フィルムは,共に表面の反応性が乏しく,表面を活性化させ親水化し,両材質を接合・接着させることは極めて困難である。両者の接合体は市場価値の高い材料として極めて有望視されている。これを実現するための挑戦的試みとして,我々の開発した3 電位電極間で形成される大気圧プラズマ形成装置によるプラズマグラフト重合を応用した新規な複合プロセスを用いて,ガラスとフッ素樹脂-異種材料の超高強度接合,接合界面における新規機能の創出とその機能性解明に関する萌芽的研究を行う。本年度の研究実績は以下のとおりである。(1)モノマー(アクリル酸)蒸発供給システムの改良により,フッ素樹脂とガラスの接着強度5 N/mmを達成するための様々な試験を行った。接着強度試験はT形はく離試験装置によった。また,従来型に比べ約10倍の幅広型プラズマトーチ電極を構築する装置を設計製作し,装置の立ち上げをおこなった。さらには,現有装置を用いて,処理速度を革新的に向上できるプラズマ条件(電圧,電力,周波数,パルス立ち上がり速度)やモノマー濃度(~1%)に関する最適条件,プラズマ処理を実施する前の効果的な前後処理について検討を行い,フッ素樹脂(PTFE)の接着強度2 N/mmを実証することができた。(2)フッ素樹脂とガラスの高効率接合界面の機能性解明に関しては,プラズマ処理したフィルムに対し,XPS,SEM,FT-IR等の分析装置による表面分析を外部機関に依頼計測することで実施した。SEM分析の結果においては,PTFEフィルム表面で気相重合に特徴的なナノ構造を捉えることに成功している。また,XPS表面分析の結果においては,接着性向上のための親水性モノマーがPTFEフィルム表面で形成され,分子レベルで強固に表面に結合していることが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は2年間の計画であり,1年目にして装置の完成,運転,データ取得に成功しているため。すなわち,2015年度にモノマー(アクリル酸)蒸発供給システムの改良により,フッ素樹脂とガラスの接着強度5 N/mmを達成するための様々な試験を行うことができた。また,従来型に比べ約10倍の幅広型プラズマトーチ電極を構築する装置を設計製作し,装置の立ち上げをおこなうことができた。さらには,現有装置を用いて,処理速度を革新的に向上できるプラズマ条件(電圧,電力,周波数,パルス立ち上がり速度)やモノマー濃度(~1%)に関する最適条件,プラズマ処理を実施する前の効果的な前後処理について検討を行い,フッ素樹脂(PTFE)の接着強度2 N/mmを実証することができた。また,フッ素樹脂とガラスの高効率接合界面の機能性解明に関しては,プラズマ処理したフィルムに対し,XPS,SEM,FT-IR等の分析装置による表面分析を外部機関に依頼計測することで実施することができた。現状では実験の時間的な制約により,最大2N/mmの接着強度が確認された段階であり,最終目標には到達していない。来年度は十分な実験時間の確保と,プラズマ処理の工夫により目標値を実現できることを目指した研究を実施して行く計画である。以上より進捗はおおむね順調と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き前年度の研究を継続し,プラズマグラフト重合と放電部の改良を試みるなど,前年度の不足点の検討を重点的に行っていく。最終的には処理効率の飛躍的向上(10倍)と接着強度の従来比2倍向上(5N/mm)の挑戦的で高い目標であるが達成したい。なお実験は,現有で最新式の各種ガス分析計,プラズマ分光装置,ラジカル計測装置,接触角測定装置,イオン分析計,ナノ秒高電圧パルス電源などを使って行われ,最先端の技術を駆使する。 今年継続する2つの研究テーマおよびその下のサブテーマ,課題と想定される解決策を以下に示す。【テーマ1:フッ素樹脂とガラスの高機能接合界面の実現】1.幅広電極による処理システム確立:幅広電極を設計導入し,処理システムを構築する。課題としては幅広電極が高コストである点であるが,小型電極の並列設置で対応する。2.モノマー蒸気供給システムの改造改良:モノマー蒸気供給の際に,モノマーの凝縮液化が課題となっていたが,ダクト内にモノマー蒸気発生装置を設置することでこれを対策する。3.はく離強度5 N/mmの達成:試作サンプルのはく離強度のばらつきと低下が課題となるが,処理条件を最適化し,条件を厳密に保つことによりこれを解決する。 【テーマ2:フッ素樹脂とガラスの高効率接合界面の機能性解明】1.フッ素樹脂の表面状態の観察と機能性計測:XPS,FT-IR等の分析装置の未所有が課題になっていたが,共同研究契約を結んだうえで外部機関に依頼計測することで解決する。2.ガラス表面状態の観察と機能性計測:SEM装置の未所有が課題になっていたが,共同研究契約を結んだうえで外部機関に依頼計測することで解決する。本研究では実験補助のためにアルバイト学生を雇用し,当該技術の社会的認知のため幅広い様々な材料に対する研究も実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究に対し他の研究補助があり,本研究費用の一部を次年度に回すことができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
残額は少額であるが,大阪市内の協力会社と装置改良に関する研究打ち合わせの旅費等に使用する計画である。
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