ガラスとフッ素樹脂フィルムは,共に表面の反応性が乏しく,表面を活性化させ親水化し,両材質を接合・接着させることは極めて困難である。両者の接合体は市場価値の高い材料として極めて有望視されている。これを実現するための挑戦的試みとして,我々の開発した3電位電極間で形成される大気圧プラズマ形成装置によるプラズマグラフト重合を応用した新規な複合プロセスを用いて,ガラスとフッ素樹脂-異種材料の超高強度接合,接合界面における新規機能の創出とその機能性解明に関する萌芽的研究を行った。本年度の研究実績は以下のとおりである。(1)モノマー(アクリル酸)蒸発供給システムの改良により,フッ素樹脂とガラスの接着強度5N/mmを達成するための様々な条件を変えた最適化試験を行った。接着強度試験は両面テープを用い,T形はく離試験装置によった。さらには,現有装置を用いて,処理速度を革新的に向上できるプラズマ条件(電圧,電力,周波数,パルス立ち上がり速度)やモノマー濃度(~1%)に関する最適条件,プラズマ処理を実施する前の効果的な前後処理について検討を行い,フッ素樹脂(PTFE)の接着強度3 N/mmを初めて実証することができた。(2)フッ素樹脂とガラスの高効率接合界面の機能性解明に関しては,プラズマ処理したフィルムに対し,XPS,SEM,FT-IR等の分析装置による表面分析を外部機関に依頼計測することで実施した。SEM分析の結果においては,PTFEフィルム表面で気相重合に特徴的なナノ構造を確認することに成功した。また,XPS表面分析の結果においては,接着性向上のための親水性官能基がPTFEフィルム表面で形成され,分子レベルで強固に表面に接合していることを確認した。
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