メンテナンスフリーとされる太陽光発電システムの安全性が問題視されている。火災のない安全な太陽光発電の普及には定期点検が重要だが、保守点検には熟練した点検者と多くの工数を要する。500℃程度の太陽電池モジュールのホットスポット(HS と略す)の検出には、IR カメラ画像点検などの屋外作業を必要とした。今回、点検作業の自動化を目指し「HS 温度予測モデル」の開発を行った。先行研究では、効率向上を目的とした室温付近の熱伝導モデル研究は有るが、HS を扱う高温熱モデルの研究は見当たらない。本研究は、HS 形成を創発科学的な視座で捉え、半導体製造プロセスの均一温度制御用に開発した熱モデルを、非線形現象としてのHS 温度予測に拡張するという新たな着想を得て、異常状態の常時監視システム開発にチャレンジした。 その結果,まず高温HS を単セルモジュールに部分陰で発生させる現象再現実験により赤外線カメラ画像と焦げ付き画像を得た。HS は250℃以上の温度に達した。つぎに太陽電池セルの温度分布をシミュレーションするモデルをMATLAB(制御工学向けソフト)上でモデル構築し温度分布と温度上昇グラフの再現を試みた。その結果、実験結果と比較し、典型的な条件で数十%の精度で温度分布の予測が可能だと確認した。高温HS が生じているかの検知を目的とするので十分な精度である。創発的現象を表すモデルはセルオートマトン法を利用し焦げが広がる現象を再現した。単セル太陽電池とホットプレートによる加熱基礎実験からアバランシェ電圧Va(逆電圧印加時の降伏電圧)の温度特性の基礎データ収集も行った。この結果から、25℃当たり約1V の変化が起こることと、アバランシェ電圧と短絡電流Isc には強い相関があることを確認した。
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