地球上(地表付近)での資源的豊富指標であるクラーク数が1番の酸素と4番の鉄の化 合物(鉄酸化物系)を活用して、人・環境に調和した新規太陽光エネルギー変換システムに関する研究を実施した。 汎用型太陽電池であるp-n接合系とは異なる研究アプローチとして、光合成原理に倣った人工光合成系への拡張を実現するため、鉄酸化物の中でバンドギャップが太陽光の最大エネルギー波長に合致したα-Fe2O3の光電極高機能化を目指した。極性結晶の有する自発分極バンドギャップの狭帯化による近赤外光領域の利用拡張、さらに従来の太陽電池では着目されなかったスピン秩序制御による励起キャリアの長寿命化を実現し、新しい高機能太陽光エネルギー変換素子を創製した。 具体的な実施項目は以下のとおりである。 (1)バンドエンジニアリングによる光電変換効率(光吸収帯域)の改善を行った。 カチオンサイト(Feサイト)置換による伝導帯レベル制御としてRh置換が極めて有効であること、レアアース以外の元素としてはSiが有効であることを見出した。 アニオンサイト(酸素サイト)置換による価電子レベル制御によりバンド狭帯域化に関しては、Sによる部分置換が有効であることを見出した。 (2)極性結晶層のヘテロ積層による水素発生(水の光分解)の高効率化を実施した。 ZnO等の極性結晶を活用し、その自発分極およびピエゾ分極による自己バイアス電荷を導入し、その自己分極電界の印加効果によるバンドベンディングを活用することで、光触媒機能(水素発生)高効率化を行った。 (3)スピン秩序制御による励起長寿命化および光キャリア輸送能の向上については、電子-正孔分離能向上と、励起三重項状態を利用した励起キャリア長寿命化を行った。 太陽光エネルギー変換の高効率化に関する研究は現在継続中である。引き続き研究申請を行い、本項目関係の研究は継続していく予定である。
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