研究実績の概要 |
磁性ガーネット薄膜において抵抗変化現象を観測するため、還元性の金属であるTiを電極とする通電用試料を作製した。絶縁性材料である磁性ガーネット薄膜上へ帯電防止剤を塗布し電子ビーム描画し電極パターンを形成した。電極の形状は300μm×300 μmの正方形とし、電極間距離を1,5,10,15μmの4種類とした。現像後EB蒸着によりTi 10 nm / Au 50 nmを蒸着し、リフトオフにより電極を作製した。I-V特性を測定し、抵抗及び抵抗率を測定した。磁性ガーネット製膜時に酸素を導入しなかった試料①では、酸素を導入して製膜した試料②より約25倍大きい電流が流れた。これはCe:YIG試料中に酸素欠損が生じてFe, Ceイオンの価数が変わり不純物準位が形成され、ホッピング伝導により電流が流れやすくなったためであると考えられる。 さらに、Ce:YIG-Ti界面の接触抵抗を減少させることを目的として、電極形成後の試料を窒素雰囲気中にて200、300、400℃で10分間アニールし、I-V測定を行った。酸素流量比0%の試料①は、アニール温度を増加させると抵抗値が増加することがわかった。一方、酸素流量比1%の試料②は、試料①と同様にアニール温度の上昇に伴って抵抗値が増加した。しかし、酸素流量比0%の試料①に比べて抵抗値の上昇は小さかった。試料①において抵抗が大きく増加した原因は製膜時に導入された酸素欠損がアニールによって補償されたためと考えられる。同様な測定をCeを導入しないYIG試料に対して行ったところ、酸素を導入せずに製膜した試料③が酸素を導入して製膜した試料④と比較して10の6乗倍大きな電流が流れることがわかった。また試料①,③はそれぞれ②,④と比較して強い面内磁気異方性を示すことがわかった。磁性ガーネット薄膜製膜時の酸素導入の有無によって抵抗と磁気異方性が異なることを明らかにした。
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