研究実績の概要 |
前年度に当初計画に盛り込んだ、BiFe1-xGaxO3粉体の単相作製条件の確立と相図作製、BiFe1-xMxO3(M= Al, In, Zn-Ti)粉体の常圧合成と相図決定、メスバウアー分光測定による結晶相転移に伴う磁気秩序の探査に関し、大きな成果を得たが、電界による磁気冷却の実証に不可欠なバルク体の作製およびその強誘電特性の解析については未達成であった。本年度は、目標を達成するため、最初に、バルク焼結体の低温での作製条件を明らかにするとともに、焼結が不十分な場合でも電気的特性を維持し、高電界印加による菱面体晶ー擬正方晶間の相転移を誘起できる低い抗電界を有する組成、イオン置換種を探査した。その結果、以下のような具体的成果を上げた。 1.電界誘起による相転移に必要な菱面体晶ー擬正方晶モルフォトロピック相境界の組成を持つBiFe1-xGaxO3(x=0.1~0.2)は、550℃以上では分解するため、低温焼成は不可欠である。このため、プラズマ焼結法を用いて、低温でのセラミックス焼結条件を探査し、450~500℃での粉体合成における前駆体を用いての焼結が最も適していることを明らかにした。また、これらのセラミックスに対する強誘電性の評価から、十分に飽和した分極特性を得るには、高いGa置換量に対して異相の生成を抑える対策が必要なことが明らかとなった。 2.イオン置換による低い抗電界を達成するため、評価の容易な単結晶薄膜試料を作製し、電気特性を評価した。擬正方晶BiFe0.7Ga0.3O3(c/a=1.26)と正方晶BaTiO3(c/a=1.03)との固溶体(1-x)BiFe0.7Ga0.3O3-xBaTiO3では、x の増加とともにx=0.1~0.2で緩やかにc/aが減少して1に近づき、比例して抗電界も減少し飽和した分極特性が得られることを明らかにした。
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