研究課題/領域番号 |
15K13946
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
須田 善行 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70301942)
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研究分担者 |
島 弘幸 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (40312392)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電磁波吸収体 / カーボンナノコイル / 垂直配向 / 指向性 / 静電植毛 |
研究実績の概要 |
ナノメートルサイズのラセン状炭素繊維であるカーボンナノコイル(CNC)は電磁波吸収体としての応用が期待されている。しかし現状では、CNCのコイルピッチやコイル直径に依存した電磁波吸収特性が得られていない。本研究では、当初、静電植毛技術を応用してCNCを垂直配向した試料を作製することで、CNC同士の間隔によって吸収できる電磁波帯域が制御可能かどうかを検討する予定であった。しかし、研究開始後に、電磁波吸収特性を大きく左右する可能性があるCNCの特性を測定することに成功したため、昨年度はその研究に注力した。本特性の測定結果を理論的にも詳細に検討し、雑誌論文として報告した。 集束イオンビーム加工観察装置 (FIB) を使用して単一のCNCを基板上に配置し、その両端に電極を接合した。コイル直径が約300から1500 nmまでのCNCの直流電気抵抗を測定したところ、コイル直径によって電気抵抗率が増加する現象を見出した。CNCのようなアモルファス物質の電気伝導機構としてはVariable range hopping (VRH) modelが知られている。そこで、クライオスタット装置に導入できるCNC試料を新たに作製し、4から280Kの温度範囲でCNCの直流電気抵抗を測定した。CNCの抵抗率は温度を下げると増加した。従ってCNCは半導体特性であることを確認した。また測定に使用した3つのCNC試料の間では、コイル直径が2倍大きくなると抵抗率が2桁以上高くなった。 VRHモデルにおける定数の一つである最高抵抗率とコイル直径との関係を求めたところ、両者の間には正の相関がみられた。また最高値と最低値の間で値が約290倍異なることが分かった。以上のことから、理論的裏付けを持ってCNCのコイル直径に対する抵抗率の増加を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
静電植毛装置を導入するという当初の計画からは変更したものの、CNCを電磁波吸収体として活用するために重要な特性を評価することができたため。本評価結果を元に、次項に示す研究内容を実施する予定である。そのために必要な備品はすでに研究室内にそろっており、電磁波吸収体の作製ならびに測定も経験済みである。
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今後の研究の推進方策 |
以下の項目について研究を進め、本年度末までに雑誌論文等へ研究成果を公表する。 1.CNCへの表面コーティングによる直流電気抵抗の低減 コイル直径によってCNCの抵抗率が大きく変化することを昨年度の研究で明らかにした。コイル直径が小さいCNCに対してその抵抗率を低減することを目的に、金属をCNC表面へコーティングすることを試みる。研究代表者が本研究と平行して進めている燃料電池用触媒担持技術を利用する。 2.コイル直径によるCNCの選別 孔径数百nmのメンブレンフィルタを利用してCNCをコイル直径によって選別することを試みる。CNCの分散溶液の作製経験があるため、吸引濾過による目的試料の抽出に注力する。 3.機能化したCNCによる電磁波吸収体の試作ならびに評価 1.および2.の手法によって作製したCNC(以下、機能化CNC)を樹脂に混合して電磁波吸収体を試作する。これまでに経験のあるエポキシ樹脂の他に抵抗率の異なる樹脂も含めて検討する。また、機能化CNCを樹脂に混合する際には、磁石吸引によってCNCが配向できないかどうか試みる。電磁波吸収体の評価は一般財団法人ファインセラミックセンター(JFCC)の機器を利用する。 4.実験試料構造を模擬した電磁場理論モデルの構築ならびに解析 3.によって作製した電磁波吸収体の内部構造を詳細に観察した上で、電場ならびに磁場を解析するための設定空間を決定する。その後、電磁波吸収特性の周波数依存性を求めるための理論モデル解析手法について研究分担者と討論を重ねる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画から変更し、電磁場解析を次年度に実施することにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画していた電磁場解析は、分担者との討論によってモデル構築することに変更する。その一方で、今後の推進方策の各項目で必要な物品を購入するなど、CNCの機能化と試料作成に研究費を集中させる。
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