研究課題/領域番号 |
15K13947
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
東城 友都 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30736385)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アゾメチン結合 / アミノ基 / シリコン基板 / 修飾 / 紫外線照射 |
研究実績の概要 |
本課題は、Si基板上に共役π分子を修飾し、そこに単層カーボンナノチューブ(SWNT)の基本骨格であるシクロパラフェニレン(CPP)を導入し、CPP同士を熱融合することで、直径の揃ったSWNTの物理合成に関する研究である。今年度の研究では、新規に購入した紫外線レーザー照射窓付電気炉を用いて、SWNTの合成に関する実験を行なった。フラーレン: C70をSi基板表面に配列し、フラーレンに[12]シクロパラフェニレン([12]CPP)を導入後、[12]CPP同士を熱融合させ一次元構造の合成を行なった。走査型電子顕微鏡(SEM)・透過型電子顕微鏡(TEM)による構造観察および、ラマン分光分析による振動モード解析から、得られた試料には一部アモルファスの一次元構造が含まれるが、円筒状構造のSWNTの存在も確認された。特にラマン分光分析からは、SWNTに起因するGバンドの分裂が確認された。次に、SWNT成長土台であるフラーレンを一次元共役π分子に変更し、これをSi基板上に固定する前工程として、Si基板上にアミノ基の修飾を行なった。具体的には、フッ化水素酸でSi基板表面の酸化膜を除去し、亜硫酸アンモニウム水溶液でSi基板表面を平坦化した後、アンモニア雰囲気下にてSi基板表面に紫外線を照射しながらアミノ基の修飾を行なった。フーリエ変換赤外分光(FT-IR)法による振動モードの分析より、Si基板からアミノ基の伸縮振動と変角振動に起因するピークが3350 cm-1および1550cm-1近傍に観測されたため、Si基板上にアミノ基が修飾されていることが示唆された。アミノ基の修飾は、Si基板上に5000 mW/cm2以上の紫外線レーザーを24時間または48時間照射することで達成された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題で購入した紫外線レーザー照射窓付電気炉は、既製品の販売がなく、設計・製作を一から行なったため、装置の完成まで時間を要した。また以前利用していた同構造の電気炉よりも小型化しているため、実験の再現性を取るための条件出しに時間を要した。さらにアミノ基をSi基板上に修飾するための紫外線レーザー強度の最適化やレーザー・Si基板の最適配置の条件出し等に時間を要した。当初の研究計画では、一次元共役π分子をSi基板上のアミノ基に固定後、この構造解析まで進める予定であったが、現状アミノ基の修飾および構造分析までしか進んでいないため、急ピッチで研究を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
アミノ基を修飾したSi基板上に共役π分子の修飾を行なう。具体的には、ホルミル基を有する共役π分子を不活性ガス雰囲気下で加熱・昇華させ、Si基板上のアミノ基とアゾメチン結合を形成させる。この際、Si基板上に共役π分子を垂直配向させるために、共役π分子の光配向性を利用し、一方向から紫外線を照射しながらSi基板上に共役π分子を固定する。共役π分子の配向性は[12]CPPの導入方向に影響することが考えられるため、共役π分子の固定化後、Si基板表面の構造解析を行なう。この後、共役π分子を伸長させるために、アミノ基を有する共役π分子を前述と同様な方法でホルミル基を有する共役π分子に化学結合させ、構造解析を進める。以降は当初の計画に沿って研究を推進する。すなわち、伸長した共役π分子に[12]CPPを導入後、CPP同士の熱融合を行ない、得られた試料の構造解析を進める。また、電子・電気デバイスとして、得られた試料の電気的性質を評価する。
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