研究課題/領域番号 |
15K13948
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山田 晋也 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (30725049)
|
研究分担者 |
浜屋 宏平 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (90401281)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | フレキシブル / スピントロニクス / ゲルマニウム / 薄膜トランジスタ |
研究実績の概要 |
本研究では、代表者のシーズ技術である『Ge(111)上への高性能スピントロニクス材料の低温形成技術』と既存の『フレキシブル基板上への Ge(111) 結晶の低温形成技術』を融合し、フレキシブル基板上への高性能スピンデバイスを実現する基礎技術の開発を目指している。以下に研究実績の概要を記す。 (1)フレキシブル基板上に高性能スピンデバイスを形成するためのテンプレート技術の探索 従来の金誘起層交換成長(GIC)法では、Ge薄膜の結晶粒径が100μm程度であったが、結晶粒径と核発生密度の関係に着目し、ALD法によるAl2O3膜を用いることによって、Ge核発生密度を抑制することに成功した。さらに、AuとGeの多層構造と組み合わせることにより、Ge結晶の成長を促進させ、300℃以下の低温プロセスにおいて、結晶粒径が最大で約800μmにも達する大粒径Ge薄膜(擬似単結晶Ge薄膜)の形成に成功した。高性能スピントロニクス材料(ホイスラー合金)を形成するのに必須なテンプレートとしての活用が期待できる。 (2)フレキシブル基板上に形成した擬似単結晶Ge薄膜の電気特性の評価 薄膜トランジスタ応用への糸口をつかむことを目的として、上記の手法で形成したGe薄膜の電気特性を評価した。その結果、室温におけるキャリア移動度が約200cm2/Vs、キャリア密度が約3×10+17cm-3と見積もられた。このキャリア濃度の値は、300℃以下で低温形成したアルミニウム誘起層交換成長(AIC)法と比較して三桁以上低い値を示しており、高性能薄膜トランジスタへの応用が期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、フレキシブルディスプレイ技術と高性能スピントロニクス技術の融合に挑戦することが目的であり、高性能スピントロニクス技術の要となるホイスラー合金の薄膜形成には解決すべき課題がまだ多いが、ディスプレイ技術の要となる薄膜トランジスタの部分に関しては進展があり、今後の研究指針を見出している。以上により、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
フレキシブル基板上に形成した擬似単結晶Ge薄膜をテンプレートとして、ホイスラー合金薄膜の結晶成長を探索する。また、フレキシブル基板上に形成した擬似単結晶Ge薄膜をTFTに加工し、高移動度TFTチャネルとしての応用の可能性を探索する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初は既存のGIC法を用いて低温形成したGe(111)結晶をエピタキシャルテンプレートとして、IV族元素スズ(Sn)を添加したGe(111)薄膜を形成し、その上にホイスラー合金を形成する予定であった。しかし、既存のGIC法の結晶成長プロセスに深く踏み込み、巧みに制御することで、フレキシブル基板上に結晶粒径の非常に大きなGe薄膜(擬似単結晶Ge薄膜)の形成に成功した。そこでまずは、その擬似単結晶Ge薄膜のホイスラー合金を形成するためのエピタキシャルテンプレートおよびTFTチャネルとしての可能性を探索することにしたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究速度の加速のためにフレキシブル基板上に擬似単結晶Ge薄膜を形成するのに必要な電気炉を新規に立ち上げる予定であり、それに必要な物品の購入に充てる。
|