前年度までに、フレキシブル基板上への擬似単結晶Ge薄膜の形成技術と、それを用いた薄膜トランジスタ(TFT)プロセスの開発を行った。作製したフレキシブルGe-TFTは、低温で作製したp型の有機物半導体TFTや酸化物半導体TFTよりも高い電界効果移動度を示したが、ON/OFF比がこれらに比べて小さいという問題があった。そこで本年度では、TFTのON/OFF比の改善に注力した。 フレキシブル基板の軟化温度以下である400℃でポストアニール(窒素雰囲気)を行ったところ、ポストアニール前後のTFT特性を比較すると、ドレイン電流-ゲート電圧特性からオン電流の増加とオフ電流の大幅な低減が確認された。これは、ソースドレイン間に存在したリーク電流の低減を意味しており、ポストアニールによる結晶欠陥の低減を示唆している。特性が改善した理由としては、ポストアニールにおける雰囲気中に微量に存在する酸素原子にって、Ge結晶のダングリングボンドが終端されたためであると考えられる。結果として、前年度に作製したフレキシブルGe-TFTのON/OFF比は~20であったが,ポストアニールを施したものはON/OFF比は~150まで向上した。フレキシブル基板上に形成した疑似単結晶Ge薄膜上へのスピントロニクス材料(ホイスラー合金)薄膜の単結晶化の兆しも見えたため、これは今後、不揮発メモリ機能搭載型低消費電力フレキシブルTFTへの応用が期待される重要な成果であると言える。しかし、依然としてa-IGZOなどに匹敵するON/OFF比は得られておらず、TFT性能としてはさらなる改善が必要である。
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