研究実績の概要 |
本研究では,電波と光波の境界領域の周波数を有するテラヘルツ波を用いた高感度センシングの実現に向け,研究代表者が最近,人工材料フォトニック結晶を用いることで世界最小の伝搬損失の実現に成功したフォトニック結晶伝送路の研究を発展させることで,伝送路と集積化される微小共振器中でのテラヘルツ波の強い閉じこめを実現し,物質とテラヘルツ波の強い相互作用による超高感度センシングを目指した.
初年度は,0.3 THz帯に着目し,10,000以上という高い共振器Q値でテラヘルツ波が閉じ込め可能なデバイスを設計し,作製したサンプルを高精度テラヘルツ波分光系で評価することで,理論値に近いQ値約10,000の共振スペクトルを得ることに成功した.また,共振器部分へ波長の1/20以下の厚さ5 μmから50 μmの薄膜を付加した際に現れるスペクトル変化の検知に成功し,超高感度テラヘルツセンシングの可能性を示すことができた.
二年目は,初年度の研究を発展させるべく,小型で集積化可能なテラヘルツ電子デバイスである共鳴トンネルダイオードを用い,フォトニック結晶共振器によるテラヘルツ超高感度センシングの可能性を追求した.0.3 THz帯で動作するフォトニック結晶共振器を初年度同様に作製し,共鳴トンネルダイオードをテラヘルツ光源として動作させ,共振スペクトルを測定した.ミリ波発生器と周波数逓倍器からなる大型テラヘルツ光源の場合と良く一致するフォトニック結晶共振器の共振スペクトルが得られ,薄膜センシングの原理検証にも成功した.加えて,フォトニック結晶共振器と集積化された伝送路上に共鳴トンネルダイオード検出器をハイブリッド集積化したセンシングモジュールを作製した.本モジュールによるフォトニック結晶共振器の共振スペクトルの検知にも成功し,フォトニック結晶共振器を用いた高感度小型テラヘルツセンサの可能性を示すことができた.
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