本研究では、ミニバンド制御した量子ドット超格子により電子の長寿命化を図り、高効率な中間バンド型太陽電池を実現する。基底準位と励起準位のミニバンド幅の違いを巧みに利用して、バンド幅の大きい励起準位ミニバンド(光吸収中間バンド)に励起したキャリアを効果的に空間分離し、正孔と空間分離した電子をミニバンド幅が小さくエネルギー分離した基底準位(光励起中間バンド)に分散エネルギー緩和させる。これによって効率のよい伝導バンドへの光励起を実現し、電流を増大させる。平成27年度は、分子線エピタキシーによりGaAs(001)基板上にInAs/GaAs量子ドットの超格子構造をi層に内包するp-i-n GaAs太陽電池構造を作製した。平成28年度は内部電界によるキャリア分離のダイナミックスとミニバンド幅の関係を明らかにした。具体的には以下の通りである。 〇中間バンドから伝導バンドへのサブバンド間励起を選択的に行うため、近赤外光を追加して照射した外部量子効率スペクトルの測定を行い、近赤外光の波長と強度の変化に対して、吸収端バンド間遷移近傍の外部量子効率スペクトルの変化を明らかにした。 〇電界によるキャリア分離のによって、2段階光電流が増加することを確認した。 〇キャリアの移動度と再捕獲確率を考慮したシミュレーションを実施し、変換効率を最大化する内部電界とキャリア引出効率の関係を明らかにした。 〇集光倍率に対する解放端電圧と短絡電流の変化を詳細に調べる。これによって、電流整合が取れた中間バンドを介した光電流生成の最適条件を明らかにした。
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