研究課題/領域番号 |
15K13957
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
石川 史太郎 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (60456994)
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研究分担者 |
松下 正史 愛媛大学, 理工学研究科, 講師 (90432799)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノ多結晶ダイヤモンド / 高温・高圧合成 / 半導体 / 導電性 / 光物性 |
研究実績の概要 |
ダイヤモンドは、将来の高性能パワーデバイスや紫外域発光素子を実現する可能性を持つ半導体として期待されている。愛媛大学では、従来高温・高圧下でのダイヤモンド合成に取り組んでおり、近年は、世界最高級の超高圧発生装置により、通常のダイヤモンドよりも高硬度な、ナノ多結晶ダイヤモンド(ヒメダイヤ)の合成や、その高品質化・大型化に成功している。本研究はこのナノ多結晶ダイヤモンドの半導体応用材料としての展望を調べることを目的としている。初年度はその基礎物性を評価と共に、合成時に各種不純物ドーピングを行う基盤技術開発に取り組んだ。 ダイヤモンドの合成はキュービック型超高圧発生装置を用い、出発物質のグラファイトに対して15GPa、2300℃の圧力、温度を与えて行う。意図的な不純物導入を行っていない試料に対して、まずその基礎物性を調べた。2次イオン質量分析からは、H、N、Oが約10ppm以上、Bが約1ppm程度含まれていることが確認された。電気特性については、400℃以上の条件下では良好なオーミック特性が得られた。抵抗率は同800℃でおよそ400 Ωcm、キャリア極性はp型、移動度は2 cm2/Vsという結果が得られた。室温カソードルミネッセンス測定からは欠陥に起因するA-bandと思われる強い発光と、N-Vセンター付近での発光など、欠陥由来の発光が複数観測された。また、バンド端からの発光は観測されなかった。 上記の結果は、測定するナノ多結晶ダイヤモンドならではの粒界に起因した不純物および欠陥に起因した得意な物性の存在が示唆されており、さらに、得られた高温領域の導電性は半導体応用の展望を拓くものであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ多結晶ダイヤモンドの導電性について調べたところ、高温領域で得意な導電性を示すことを見出した。800度という高温で見出された半導体領域の導電性と移動度は、特殊環境下での同材料の半導体応用の展望を拓くものであると考えられる。さらに、この高温領域での導電性は約1eVと大きな活性化エネルギーを有する熱活性な素性を持つもので、ナノ多結晶ダイヤモンド特有の粒界や不純物欠陥に起因する可能性が大きいことを把握できた。 上記より、より特性を正確に把握・制御することで、ナノ多結晶ダイヤモンドを半導体として確立していくための有用な知見を初年度で得られたと考えている。さらに、同特性を制御するための不純物導入技術においても実験を進め、不純物との反応領域を同定した試料の合成にも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
高温領域で観測された比較的良好な導電性をより低温で、さらに高い導電性を示すようにナノ多結晶ダイヤモンドの物性を制御していく。そのためにまず含有される不純物の導電性に与える影響を正確に把握する。さらに、その濃度を制御できる合成条件を確立していく。さらに、現在導入されていない不純物も積極的に導入し、これによる物性制御を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初目的としていた不純物導入試料合成に若干の遅れが生じたため、同試料を用いる関連実験が翌年度へ持ち越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
不純物導入したナノ多結晶ダイヤモンド試料合成を重点的に進める。
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