研究課題
本研究の目的は、強磁性電極を用いた半導体スピン注入・検出技術と核電気共鳴(NER)効果を併用し、光や振動磁場を用いずに、電気的制御のみで半導体中の核スピンをナノメートルスケールの空間分解能で選択的に制御できる素子を創出することである。そのため、ソースおよびドレイン電極を強磁性電極とした電界効果型スピントランジスタ構造を用いて、(1) 強磁性体から半導体への高効率スピン注入、および、高効率核スピン偏極の実現、(2) 半導体中のNER効果の実証とその特性解明、(3) NERを用いた核スピン操作とその電気的検出の実証をめざす。研究最終年度である平成28年度は、主に、上記(2)と(3)に取り組んだ。まず、核スピンの選択性を向上するため、トップゲート構造を有する電界効果型スピントランジスタを作製し、ソースの強磁性体からGaAsチャネルに注入されたスピン信号のゲート制御を実証した。次に、同素子にて、注入した電子スピンとその近傍の核スピンに働く相互作用を利用し、核スピンを効率的に初期化できることを実証した。最後に、ゲート電極に高周波電場を印加することで、GaとAsの核スピンから生ずる核磁場が共鳴磁場のところで消失することを確認し、NERによる核スピン操作を実証した。核スピンの初期化およびNERによる核スピン状態の検出には、核スピンの偏極に伴って発生する核磁場を電子スピンの歳差運動から検出する傾斜ハンル効果測定法を用いた。以上より、半導体スピン注入とNERを併用した全電気的核スピン制御法を確立し、本研究課題の目的を達成した。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 6件、 招待講演 3件)
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