研究課題
本研究はスピン・軌道相互作用に由来するトルク-スピン軌道トルク-を用いた新しい磁化制御方式の基礎物理を確立し、それを用いた3端子磁気メモリ素子の実用化のための基盤技術を構築することを目的としている。これまでのスピン軌道トルクによる磁化反転方式は、電流方向をX方向と定義した時、磁化容易軸はY方向、あるいはZ方向を向いていたのに対して、本研究で提案する磁化反転方式においては磁化容易軸はX方向を向く。この方式の動作を実証し、かつ旧方式と比較することでスピン軌道トルクの物理の理解を深めることができると期待できる。平成27年度に行った研究で、上記の新規提案方式の基本動作実証に成功している。平成28年度は平成27年度に行った研究を発展させ、ナノ秒、サブナノ秒での磁化反転を詳細に調べ、従来のスピントルク磁化反転技術では実現が困難なサブナノ秒領域における低電流での磁化反転が新方式では可能なことを示した。具体的には、Y方向を向く従来構造の素子(従来のスピントルク磁化反転モデルに従う)とX方向を向く新構造の素子を同一基板上に作製し、その高速磁化反転特性を評価した。従来構造素子ではパルス幅が1ns以下では十分高い確率での磁化反転が低電流密度では得られなかったのに対して、新構造素子では0.5nsのパルスでも100%の確率で磁化反転が観測された。また磁化容易軸をX方向からわずかに回転させた構造においては、高速動作性能を妨げることなく、無磁場での動作が可能となることを計算で確認し、かつ実デバイスで実証した。これらにより、高性能低消費電力集積回路の実現に適したスピン軌道トルク磁化反転素子の基盤技術が構築された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 12件、 招待講演 17件)
Japanese Journal of Applied Physics
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応用物理