研究課題/領域番号 |
15K13970
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
小野 行徳 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (80374073)
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研究分担者 |
土屋 敏章 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (20304248)
堀 匡寛 静岡大学, 電子工学研究所, 講師 (50643269)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | チャージポンピング / 電子スピン共鳴 |
研究実績の概要 |
本研究では、我々が培ってきた単一電荷転送と単一欠陥評価の独自技術をベースとして、これに電子スピン共鳴の技術を融合させることにより、新規な欠陥評価手法「高感度チャージポンピング・スピン共鳴法」を確立し、この新手法を基軸として、「電子対転送」のメカニズム解明に取り組み、「室温動作が可能な単一電荷、単一スピン制御技術」確立のための指針を示す。 これらの目的に対して本年度は、主として低雑音EDMR(Electrically detected magnetic resonance)の立ち上げを行った。 まず、EDMR立ち上げの前段として、電子スピン共鳴(ESR)測定系の高感度化に取り組み、同系を砒素ドープシリコンのESRに適用した。その結果、「進捗状況」の項で詳述するように、極微量の砒素のESR信号を観測するとともに、砒素原子が他のドーパント原子(リン、アンチモン、ビスマス)とは異なる特異な振る舞いを示すことを見出した。 続いて、SiO2/Si界面のEDMR計測を行い、良好なEDMR信号を観測した。さらに、EDMR用サンプルホルダーの材質を変更するなどの改善により、当該年度の主たる目標であった「チャージポンピング・スピン共鳴法」による信号を検出することに成功した。 さらに、実時間チャージポンピング法の精度を通常のチャージポンピング法と比較し、良好な精度が得られていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キャビティー中の試料をさらに二重石英管の中に閉じ込めることにより大幅な感度上昇を達成し、これにより、シリコン表面近傍にのみ存在する微量(~1E-11 /cm2)の検出に成功し、砒素が低温で常磁性化していない事を強く示唆する結果が得られた。同成果は、Applied Physics Letter誌に掲載された。 さらに、EDMR用のサンプルホルダーの材質をプリンティングボード素材(FR4)から高純度石英に変更する等の改善により、EDMR計測に付随するゴースト信号の除去が可能となり、これによりチャージポンピングモードでのEDMR信号を「室温で」観測することに成功した。同成果は、Silicon Nanoelectronics Workshopに投稿中である。 また、実時間チャージポンピング法の精度評価に関する検討を論文としてまと、IEICE Trans. Electronicsに掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
EDMRの詳細計測のために、低温系を新たに立ち上げる。その後、EDMRの温度特性を取得した後に、チャージポンピングに用いるゲートパルスの立ち上がり、立下り時間を変化させることにより、界面欠陥の状態密度分布を明らかにする。また、界面欠陥エネルギーとEDMR信号から得られたg値等のスピンに関連した物理量との対応関係を明らかにする。 さらに、実時間チャージポンピング法をEDMRに適用することにより、本研究の主題であるところの2電子再結合の計測にかかる。特に、2電子のスピンの状態とチャージポンピング関を明らかにすることにより、従来理論を超えた新しいチャージポンピング理論を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者の所属機関がH28年度から変更になることに伴い、基金の使用用途に変更が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品(ケーブル類)の購入に充てる。
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