近年、地震に伴う電磁気現象が観測され、従来の地震学による長期予測に加えて、電磁気学的アプローチによる短期予測の驚くべき可能性が示唆されている。しかし、そのメカニズムがこれまで解明されておらず、地震と電磁気現象との関連を理論的に説明できないという問題があった。研究代表者らは地震直前に生じる電磁波の異常伝搬を理論的に解明し、さらにこの理論を数値解析により検証した。 本研究では、この新しい理論に基づく解析手法を発展させ、国土地理データを用いて実際の地形における異常伝搬現象を解明することに成功した。その結果、特に山岳地帯の複雑な地形と地殻活動に伴う電荷の地表面への出現により、ラジオ放送波がランダムな方向へ強く散乱されることが判明した。この研究成果は米国地球物理学連合の学術誌に採録され、同学会ホームページにおいて注目の論文として取り上げられた。 本研究により電波と地表面電荷の相互作用を大規模な数値解析によって解明することが可能となった。この成果に基づき様々な地点から出射されるラジオ放送波の強度を常時観測することにより、これまで不明であった地殻活動と地表面電荷の関係を推察することが可能になり、ひいては地震につながる地殻の応力変動を検出できる可能性が高まることが期待できる。 さらに申請者は本理論に基づき電磁波の観測機器を整備し観測を開始した。現在観測データを蓄積しており、今後本研究のデータを統計的に分析し、地殻活動と電磁波の伝搬異常との関連性を科学的に立証する予定である。
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