本研究は水蒸気(湿度)や微量なアセトン、エタノール等の混合ガスを自動制御して導入しながら電流や静電容量変化を計測するシステムの構築と基礎的データの収集を行った。 当初計画通り以下の3つを検討した。 1) 新規計測システムの開発、2) カーボンナノチューブ(CNT)電極を有するポリイミド静電容量型湿度センサの超高速応答評価、3) 半導体と誘電体ナノ材料等を組み合わせたナノハイブリッドガスセンサの開発と特性解析 [項目1] カーボンナノチューブ(CNT)を電極とした極薄ポリイミド湿度センサは理論上10ms台で応答可能であるが既存のシステムではガス制御時間が長いため、10ms台で高速ガス置換するシステムの構築とmsで容量計測するシステムを開発した。次にサブppmオーダーでアセトンやエタノール等を制御するシステムを構築しガス制御と電流、容量、QCMを用いた質量変化を自動取得可能なシステムとした。 [項目2] CNT電極を有する高速ポリイミドセンサの改良と項目1のシステムによる実証試験を行った。ガス置換と容量計測を高速化することで湿度センサ本来の高速応答計測が可能となり初年度に0.4秒程度であった湿度センサ応答を従来報告されてきた容量型湿度センサを大幅に上回る40msと約10倍に高速化した。 [項目3] ナノ誘電体と有機半導体の積層構造の誘電特性やキャリア輸送を評価する時間応答計測システムを構築しキャリア輸送現象等を評価した。また、ナノ誘電体と有機半導体等を組み合わせたナノハイブリッド膜によりアセトンやエタノールに対する微量ガス応答を評価した。PCBMを用いたn型半導体ではアセトンガスppmオーダーで電流が優位に増加(抵抗減少)し、PQT12を用いたp型半導体では大気中のように高濃度に酸素が存在する空間でもサブppmオーダーのアセトンガスを高濃度検出可能であることを実証した。
|