本研究者は、独自のTime-of-Flight距離計測方式と高速な電荷変調素子によって、従来よりも高い距離分解能を得られる撮像素子について開発を進めている。本研究は、この高精度距離撮像素子の応用として、光学印象への展開の基礎技術開発および基礎的検討を目的としている。高い距離分解能を有するTime-of-Flight撮像素子を利用して、多重反射を利用した死角情報を取得することにより、より簡便で高精度な光学印象採録のためのデバイスが期待できる。 提案する手法においては、レーザトリガと距離撮像素子の時間窓の位相を変化させて、対象物のインパルス応答を測り、そこから多重反射成分を推測する。これを実現するための遅延回路では高い時間精度で遅延を調整させることが求められる。これの候補として市販されているディジタル遅延生成器では時間分解能は高いものの、低い周波数のジッタ揺らぎがあり、高精度なTOF距離計測に適用できないという問題があった。そこで、ボード上に遅延可能なICを利用して、最小10ピコ秒ステップ、遅延範囲40ナノ秒をカバーできる遅延調整器を製作した。遅延ICを4つ組み合わせ、遅延範囲を広げており、サイズは使用しやすいように、クレジットカードサイズに収めている。本遅延ボードを利用して、所有する高分解能TOF距離撮像素子の変調特性を計測したところ、特定のコードの部分で非直線性が悪いものの、処理によって十分に使用できることがわかった。また、この変調特性からスキュー補正回路の評価が行えることを確認した。
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