メニスカス力を利用して単結晶シリコン層をポリエチレンテレフタレート(PET)基板へ転写する技術に関して、以下の研究成果を得た。 ①単結晶シリコン層をPET基板へ転写した後の低温熱処理により界面にSi-O-C結合が形成されることにより高い密着性が得られることがFTIR-ATR法を用いた解析により明らかになった。シリコン表面シラノール基の脱水重合反応の進行とともにPET基板側のC-Oへの架橋が形成され、強固なSi-O-C結合による高い密着性が得られることが分かった。 ②中空構造で単結晶シリコン層を保持しているSiO2柱の形状がイオン注入法により制御できることを見出し、理想的なテーパー形状に形成できることが分かった。単結晶シリコン層とSiO2柱の界面部分が最も細くなるため、転写の際にこの部分から分離する理想的な分離箇所制御が可能となった。これらの改善により99%以上の歩留まり達成に成功し、高い歩留まりが要求される回路動作や多機能デバイスの集積化へと展開する基礎作りができた。 ③PET基板上に転写した単結晶シリコンを用いてNMOSインバータ動作を試みた。トータルプロセスの改善によりPET基板上130℃プロセスで電界効果移動度609cm2V-1s-1のトランジスタを再現性よく動作できるようになり、NMOSインバータによる明瞭な反転信号を3MHzの動作周波数で得ることに成功した。 以上の成果により、プラスチック基板上で異種材料デバイスを集積化するための基盤技術の構築をおこなった。
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