研究課題/領域番号 |
15K13977
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
山口 堅三 香川大学, 工学部, 助教 (00501826)
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研究分担者 |
藤井 正光 鳥羽商船高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00413790)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 表面プラズモン / NEMS / 静電アクチュエータ / アクティブプラズモン / メカニカルプラズモニクス / 導波路 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、表面プラズモン(SP)を用いた光導波路の可変制御技術の開発とモニタリングセンサへの応用である。SPは、回折限界以下の光エネルギーの閉じ込めと局所な電場増強効果より、センサの高感度化やデバイスの小型化の要素技術となりうる。これまでに、NEMSアクチュエータで金属サブ波長格子を構成し、電気信号で構造をメカニカルに制御することでSP共鳴波長を可変可能なアクティブプラズモンデバイス(APD)を開発した。同様な発想をSP導波路に適用することで、共鳴波長に加え、伝搬距離も可変できると考えた。本研究では、ギャップ型のSP導波路にこれらの知見を採用し、単一ナノ光導波路中での可変制御技術を確立する。また、可変型SP導波路の特徴を活かし、歪みや表面分析センサシステムにおける技術体系の構築を目的とした。 平成27年度は、代表者と分担者1名、海外共同研究者1名、学生1名で研究体制を構成し、ギャップ型可変プラズモン導波路(ギャップ型可変PWG)の(1)光学現象の解明と構造の最適化、(2)その作製及び評価光学系の構築と、その光学特性評価を実施した。 本年度の成果として、ギャップ型可変PWGの(1)光学現象では、ギャップ間隔と透過光波長の関係とその電界強度分布特性を明らかにした。次に、ギャップ型可変PWGの(2)作製に成功し、構築した評価光学系において印加電圧による光スペクトルの可変特性を確認した。これらの結果、論文7編、プロシーディング5編、国際会議10報、国内会議15報、特許出願3件(内、1件審査請求中)、受賞2件の研究業績(関連研究も含む)を収め、本技術がNature関連誌で紹介された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請した提案書に基づきPDSAサイクルを実施することで、SP導波路の可変制御となる基盤技術を構築した。 (1)の光学現象の解明と構造の最適化では、2次元有限差分時間領域(FDTD)法を用い、数値解析を行った。この結果、ギャップ型可変PWGより、周期的な透過光共鳴波長を観測した。また、本共鳴波長は、ギャップ間隔が狭くなる(電圧を印加することに相当する)に従い、長波長側へシフトした。さらに、周期的な共鳴波長は、ギャップ端面間(金属-空気、基板-空気)におけるファブリー・ペロー共振であることを電界強度分布から明らかにした。 (2)の作製及び評価光学系の構築と、その光学特性評価では、作製したギャップ型可変PWGの2枚の金属シートとその間の金属ギャップは、200 nmと300 nmであった。ギャップ型可変PWGにTM偏光を入射したときの透過光スペクトルより、複数の周期的な共鳴波長を観測した。また、印加電圧が大きくなるにつれ、共鳴波長のレッドシフトを観測した。本結果は、(1)で得られたFDTD法による計算結果とも定性的な一致を示す。さらに、これまでのSP共鳴波長の可変に加え、伝搬距離の制御もSP導波構造の変調で実現できる。 一方、本デバイスの実用化の1つとして、ファイバ端面上への中空保持なギャップ型可変PWGを提案している。平成27年度の研究成果として、光ファイバ端面上でのギャップ型可変PWGの作製プロセスに必要となる光ファイバエッチングのエッチング条件を決定した。 以上を総合的に判断し、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究実績と進捗状況を踏まえると、おおむね順調に進展していることが分かる。そこで、平成28年度は、申請時の研究計画を通り、下記を実施することでギャップ型可変PWGを基盤とした光集積及びセンサデバイスの開発と実用化を目指す。なお、昨年と同等な研究体制として、代表者と分担者1名、海外共同研究者1名で構成し、本研究を推進する。 (1)の光学現象の解明と構造の最適化について、各構造条件を精査し、最適な構造を決定する。(2)の作製及び評価光学系の構築と、その光学特性評価について、(1)で決定した最適な構造を作製し、ギャップ型可変PWGの光学評価を実施する。そして、ラボ・オン・チップファイバとして、ファイバとの一体化システムを構築する。 平成28年度は、国際会議における発表を既に5報予定しており(関連研究も含む)、これに加え、論文投稿や特許出願、各種展示会やホームページ公開など技術の先導性と積極的な情報発信に努める。
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