研究課題/領域番号 |
15K13981
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
森宗 太一郎 香川高等専門学校, 電子システム工学科, 講師 (30455167)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機位置検出センサ / 測定精度 |
研究実績の概要 |
近年,フレキシブルな基板上に製作できるイメージセンサが新しい電子デバイスとして期待されている。しかし現在その素子構造にはCMOS構造を用いており,高画素化や製作工程の複雑化が問題となっている。そこで本研究では,積層型の光点位置検出センサ(PSD)を有機半導体材料で作製することで,より簡単にフレキシブルイメージセンサを作製できる素子構造を提案している。このPSDは,赤,緑,青のそれぞれに色選択性を持つ受光素子を積層しているため,素子の小型化やプロセスの簡単化ができ,また画素分離の無いカラーセンサを作ることができる。またその原理は入射した光が表面抵抗層を通過して受光層で光電変換される。発生した電荷は表面抵抗層を通って左右の両電極まで流れる。その出力電流I1,I2は,光が入射した位置から両電極までの距離に反比例するため,両電流の比からどの位置に光が照射されたかを求めることができる。 今年度は赤色と緑色に感度をもつPSDを作製し,その高精度化と耐久性について取り組んだ。また積層化に必要となる表面抵抗層の材料や成膜条件について検討した。まず赤色に感度をもつPSDについての測定精度を調べた結果,-2V印加時において測定誤差率が8.8%生じていた。そこで発生する電流についてポアソン方程式から理論式を導き素子の電極間幅や受光層の厚さなどについてシュミレーションしたところ受光層の膜厚を変えることで測定精度が大きく変化することが分かった。実験結果では受光層の厚さを30nmから90nmに増加することで6.8%誤差が低下することを証明でき,測定誤差率を2.0%まで向上することができた。また緑色領域に感度をもつ受光素子をペリレン誘導体とフラーレン誘導体を用いた構造で作製しているが耐久性が低く,現状では安定動作に至っていない。また積層化に必要な表面抵抗層としてAg電極を15~20nm程度に成膜することで表面抵抗層として利用できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PSDの高感度化と測定誤差の改善については概ね順調に進展しているが,青色領域のPSDについては現在素子の動作安定性が悪く,電極とのバッファー層や混合する材料の選定と受光特性の評価を繰り返しながら安定動作する素子の開発を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は引き続き緑色と青色に感度を有する有機材料を用いた位置検出センサの開発を行う。また積層化には赤色と緑色のPSDを積層化して光の妨げが少ない構造や測定精度の高い構造について検討する。また共通電極も透明化する必要があるため,ITO透明電極やAg電極,Au電極についても比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年3月に開催された春季応用物理学会に参加する予定であったが,校務のため参加できなかったため使用計画に差額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の国際学会の旅費と学会参加費として使用する予定である。
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