現状でのイメージセンサ構造は主にCMOS構造が用いられており,高画素化や製造工程の複雑化が問題となっている。そこで本件では積層型の位置検出センサを有機半導体材料で作製することにより,より簡単にイメージセンサを作製できる素子構造を提案した。また赤,緑,青のそれぞれに色選択性を持つ受光素子を積層することで,素子の小型化やプロセスの簡単化ができ,また画素分離の無いカラーセンサを作ることができる。またその原理は入射した光が表面抵抗層を通過して受光層で光電変換される。発生した電荷は表面抵抗層を通って左右の両電極まで流れる。その出力電流I1,I2は,光が入射した位置から両電極までの距離に反比例するため,両電流の比からどの位置に光が照射されたかを求めることができる。 昨年度は赤色と緑色に感度をもつ位置検出センサを作製し,その高精度化と耐久性について取り組んだ。また積層化に必要となる表面抵抗層の材料や成膜条件について検討した。まず赤色に感度をもつ素子についての測定精度を調べた結果,-2V印加時において測定誤差率が8.8%生じていた。そこで表面抵抗層表面および受光層内での電荷の捕獲についてシュミレーションし,実験値と比較したところ受光層の膜厚を厚くすることで測定精度が改善されることを報告した。 今年度は積層化に必要な表面抵抗層としてAg電極を用いた素子の作製を行った。Agを15~20nm程度の厚さにすることで表面抵抗層として利用できることが分かった。また素子特性は受光感度は低下するが安定的に動作し,積層化できることが確認できた。また素子の応答特性を測定した結果,数kHz程度であることが分かった。
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