研究課題/領域番号 |
15K13984
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
沼田 孝之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 物理計測標準研究部門, 主任研究員 (60420288)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イメージセンサ / 熱雑音 / 赤外線 / レーザ / ビームプロファイル |
研究実績の概要 |
光半導体イメージセンサの温度に由来する暗電流信号を利用し、中~遠赤外波長に対応可能なレーザビームプロファイル測定技術を開発することを目的とし研究を進めた。本手法は、イメージセンサ表面に光吸収層を配置し、レーザ照射・加熱によってセンサ表面の局所領域を加熱することでビームスポットの画素において熱キャリアを励起しその分布を画像として検出する新たな取り組みである。特に、光吸収層の熱伝達特性の最適化、入射ビームプロファイルと熱励起キャリア生成・検出特性の相関について数値的および実験的アプローチによる評価検討を行い、測定精度と分解能を評価して、赤外線レーザ測定の実用に資する測定技術の実現を目指す。 研究初年度である今年は、実験試料とするイメージセンサの調査と準備、光吸収材料の検討、可視光ノイズの評価、中赤外レーザを用いた加熱による熱雑音信号の検出について検討を進めた。実験試料の準備では、裏面照射型センサを搭載する市販のデジタルカメラを中心に選定を行った。この間並行して、通常のCCDセンサを用いた実験を進めた。センサを分解し表面の保護ガラスを取り除いてセンサを露出させる方法、ならびに赤外線吸収材料の調査選定とセンサ表面への設置方法、の検討をおこなって、黒色顔料と樹脂の混合物をスプレー方式により、前記保護ガラスを取り除いたセンサ表面に製膜する手法を開発した。このとき、十分な厚さを製膜することで、可視光のセンサへの到達を防ぎ、可視光由来の信号を除去できることを確認した。中赤外線を発する炭酸ガスレーザ光学系を構築し、上記の試料の受光面に集光照射し加熱する実験を行った。その結果、レーザ照射のON、OFFに応じたセンサの雑音信号の増減を検出することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
市販デジタルカメラを中心に、研究目的に最適な実験試料としてのセンサの調査を行った。特に、正常動作を保ったままレンズ部の分解、取り外しを行ってセンサを露出させることが重要となり、これらの確認に時間を要した。この間並行して、通常のCCDイメージセンサを用いた実験を進め、提案原理の基礎的検証を行って赤外線レーザの照射の有無によるセンサ温度の変化に応じた雑音信号の増減を検出することが出来た。一方で、当初計画した温度測定プローブによる実験は、センサの破損が不可避であることから、測定法の変更を検討した。そのため、検出した信号振幅とセンサ表面温度との相関に関しての定量的な評価が課題として残っている。また、これまでの基礎実験ではビームプロファイルに応じた信号の分布は見いだせていない。これは、計画の代替として通常のCCDセンサを用いたため、受光面に高熱伝導率の配線層が密に存在し、構造的に温度分布を生じにくいこと、などが一因と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
熱画像装置等により非接触でセンサ受光面の温度を評価する手法を採用すると共に、熱雑音信号の振幅との相関を定量評価する。裏面照射型イメージセンサを用いた実験試料の準備を進め、当センサを用いた赤外線レーザ照射実験を行う。特に、効果的に温度分布を与えるため照射レーザのパルス化等を検討する。また、ナイフエッジによる赤外線レーザのビームサイズの精密評価装置を開発しつつ、照射ビーム形状と熱雑音信号の分布画像との相関を評価して、赤外線ビームプロファイル測定技術としての有効性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の支出を計画していた実験試料について、選定に想定以上の時間を要した。このため、計画を変更し、当該支出分については、調達を次年度に持ち越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
機種選定は完了しているため、早急に手配を進め、引き続き計画的に研究を遂行する。
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