本研究は、半導体イメージセンサにおいて熱励起した電子を検出することで、低コストかつ高解像度な新規赤外線レーザビーム評価技術の実現を目的としている。最終年度では、赤外線レーザのビーム径の定量測定技術を開発すると共に、このビーム径とイメージセンサで得られる熱雑音信号画像との相関評価を通じて、提案原理の可能性を議論し研究を総括した。ビーム径測定技術は、国際規格で標準化された手法をベースに開発し、μmオーダの精度での測定を可能とした。これを元に、直径を既知としたレーザ光でセンサ表面をスポット加熱し熱雑音信号の検出に取り組んだ。昨年度までにレーザ加熱による熱雑音信号の検出に成功していたもののスポット状の信号分布を得るには至らず、熱拡散等によるセンサ表面温度の分布形成の不足を推察していた。そこで本年度は、センサ基板の温度制御と共に入射レーザ光の出力を増大させるアプローチに取り組んだ。さらに黒色光吸収層に代えてGe製窓材をセンサ表面に配置し、測定のノイズ源となる可視光を遮蔽する構造とした。実験の結果、直径約2 mm(1/e^2)、出力3 W、波長10.6 μmの炭酸ガスレーザ光をCCDならびにCMOSセンサに入射させスポット状の画像信号の検出に成功した。測定系を暗箱内に設置しGe窓材を取り除いた状態でセンサ表面を可視光用高感度カメラで観察しつつ同様の実験を行い、検出信号が可視光に由来しないことを検証した。またCCDセンサにおいては前年度検討を行った近赤外波長における電荷漏えい効果と類似した検出特性が観測されることも見出した。可視光用半導体イメージセンサを用いた赤外線ビームの可視化技術は世界的にも前例が無く新規性の高い成果を得ることができた。
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