微弱なエネルギーを単位とするフォトンを介した信号処理は,超高速,波長多重による大容量化と低消費電力化の点で優れており,通信システムの大きな技術進歩をもたらす可能性がある.本研究では,映像,データベースなど,情報通信サービスの膨大な通信需要に対応できる新しい通信網構築技術の基盤となる光リンクや光ノード処理に適用可能な超高速光ネットワークのための光信号処理と光論理回路の基礎研究開発を行う. 研究内容としては,コヒーレントな光信号を利用した複素係数信号処理による変復調相互変換技術により,基本要素技術を確立し,実装に向けたモデル化を行う.次に,将来の演算・記憶・伝送機能の集積化を想定したネットワークチップの可能性を探索する. 本年は,申請期間最終年度の昨年度末に外部発表として投稿した研究成果の発表を国際会議で実施した.当該の国際会議は東京開催のThe 24th Congress of the International Commission for Opticsである.歴史ある国際会議で,先進国だけでなく,発展途上国からも多くの参加者が集い,開会式では天皇・皇后両陛下のご臨席があった.発表のセッションは光通信のセッションで,聴衆は30名ほど.発表した成果は,光単側波帯変調信号の光電界複素振幅が時間的に描く軌跡を実験的に観測したこと.ほぼ理論どおりの楕円に類する軌跡を描くことが実験的に立証された.質疑応答を通じて,研究の次の課題や展開に見通しを持つことができた.
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