研究課題/領域番号 |
15K13986
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山田 功 東京工業大学, 工学院, 教授 (50230446)
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研究分担者 |
湯川 正裕 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (60462743)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 信号処理 / 部分空間追跡 / 凸最適化 |
研究実績の概要 |
「部分空間追跡」は時系列データに潜む支配的な部分空間の基底をオンライン抽出する信号処理技術であり、ビッグデータ解析等、大規模データ解析への応用でも重要な役割が期待されている。本研究プロジェクトは、本研究では、凸性と直交性という2つの相反する数学的性質を巧みに融合する方法を開拓することにより、理想的な凸最適化型部分空間追跡アルゴリズムを世界に先駆けて実現し、大規模データのオンライン解析の基盤技術を確立することを目的としており、[Nguyen, Takahashi, Yamada 2012(Multidimensional Systems and Signal Processing)]に発表済みの「帰納的に定義された入れ子状の直交補空間の閉形式を活用した部分空間追跡メカニズム」が基盤となる。
2016年度は、[Nguyen, Takahashi, Yamada 2012]のアルゴリズムの見直しを行った。まず、このアルゴリズムが採用してきた特別な関数に不連続点があることを明らかにすると共に、この不連続点が部分空間追跡性能に及ぼす影響を解明した。その結果、不連続関数が追跡の過程で不安定性を招きかねない事実が明らかとなったため、不安定性の解消のために、直交射影演算を1つ追加するアイディアを提案した。数値実験によってこのアイディアが[Nguyen, Takahashi, Yamada 2012]を飛躍的に安定化することを確認している。さらに、Adaptive normalized quasi-Newton algorithm (ANQNA)[Nguyen-Yamada'13]で提案された可変ステップサイズの自由度を拡げ、収束速度の改善を図るため、正定値エルミート行列の条件数の上界値改善に挑戦、指定されたトレースと逆行列のフロベニウスノルムの下で最適な条件数の推定値を導くことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要でも述べたように、2016年度は、まず、[Nguyen, Takahashi, Yamada 2012]が抱えていた不安定性要因の解消とAdaptive normalized quasi-Newton algorithm (ANQNA)[Nguyen-Yamada'13]の収束性能の改善に成功している。これらの成果は、既に信号処理分野でトップレベルの国際会議で発表している。さらに、凸最適化型部分空間追跡アルゴリズムのように本質的に凸性が仮定できない適応学習問題に凸最適化を応用するための手がかりを得るため、非線形性歪を伴う音響エコー消去問題にも取り組んだ。その結果、ブロック座標降下法(Block Coordinate Decent)のアイディに沿ったExact-Online Adaptive Alternating Minimizationを開発することに成功し、従来法に比べて優れた性能が得られることを確認している。
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今後の研究の推進方策 |
最近、ビッグデータ解析のための統計解析手法が世界中で盛んに研究されている。特に、主成分ベクトルのスパース性が仮定できる状況を想定し、スパースな主成分の逐次近似アルゴリズムが注目されている。ところが、データの自己相関行列の推定値を更新しながらスパースな主成分を推定するオンライン学習アルゴリズムは未だに報告されていない。 本プロジェクトの中心課題「部分空間追跡問題」は一般化主成分のオンラインアルゴリズムに関する研究であるが、一般化主成分のスパース性が仮定できる場合には、学習の過程でスパース性を促進することにより、収束速度を改善できる可能性がある。2017年度は、本プロジェクトの最終年度でもあるため、「スパース性を活用した一般化主成分のオンライン推定問題」の解決を目指したい。具体的には、Adaptive normalized quasi-Newton algorithm (ANQNA)[Nguyen-Yamada'13]で逐次抑圧されていた関数に成分の絶対値和(L1ノルム)を新たに加え、これをANQNAで逐次抑圧する方針の検討を進める予定である。 。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者がドイツに滞在し研究することになったため、H28年度に実施予定だった研究をH29年度に行うことにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
信号処理シンポジウム2017への参加、招聘旅費やセミナーの謝金、書籍代等にて繰越金を使用予定。
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