アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル(A/D)変換において、その処理を光領域で行うことで、超高速処理を実現する光A/D変換の研究開発を行った。これまでの光A/D変換においては、光ファイバ中の非線形効果を用いたものがほとんどで、長尺な光ファイバを必要とし、系の構成も複雑になるだけでなく、処理に膨大な光エネルギーが必要であった。 本研究課題では、半導体素子の光信号増幅過程で発生する固有の周波数チャープ現象を利用することで、光強度-周波数変換を実現し、これを応用した、新しい光A/D変換の提案を行い、その有効性を明らかにするべく、実証実験を行った。動作速度は10 GSample/s以上を想定したため、利得回復時間の高速な量子ドット半導体光増幅器を利用し、10 Sample/sのサンプリングパレス列を生成し、光量子化の性能評価を詳細に行った。量子化レベルは、光強度-周波数変換を行った際のチャープのシフト量と、それをフィルタリングする矩形波フィルタのフィルタ透過波長によって、決定される。矩形波フィルタについては、本研究資金で購入した高性能フィルタを使用することで、4レベルでの光量子化が実現出来ることを明らかにした。また、光量子化後のパルス列についても、入力パルスの光強度に準拠した数のパルスが出力されることを確認し、提案した光A/D変換技術の有効性を実証することに成功した。 具体的な成果として、新規性の高い提案技術とその有効性から特許の出願を行い、学会における研究公表においては、光ファイバ通信分野で国際的に最も権威のある光ファイバ通信国際会議OFC(採択率はおよそ30%)に採択され、その成果を国際的にアピールすることが出来た。
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