研究実績の概要 |
本研究は、基本振動数100MHz, 変位振幅数10nm~数100nmの高速振動の精密変位測定を目標として検討を進めた。本研究の背景には高速マイクロマシンや超音波デバイスの発展がある。これらの中には、基本振動数が100MHz、振動変位振幅が数10nm~数100nmに達するデバイスがある。しかし、その評価や制御に必要となる測定技術が十分に追いついていないことが、研究の動機である。 本研究で検討を続けてきた手法は、高速な位相変調をかけたレーザ光を利用した干渉計測で、繰り返し測定をすることなく、一回で高速で微小な変位を精密測定できる。これまでの検討で、当初想定していた三角波だけでなく正弦波位相変調を行うことでも信号処理の工夫により、測定精度をあまり劣化させることなく高速変位の測定が可能なことがわかってきた。これにより、位相変調光の生成が大きく簡素化された。初年度は三角波位相変調を利用した手法では、変調器の特性を事前に測定することなく、精密な変位測定が可能となる手法を確立した。また、正弦波位相変調を利用した手法では、10MHzを超える振動変位の精密測定を達成した。 これらを踏まえて、平成28年度は、鏡面のみならず粗面に対する計測を実証した。非常に微弱な戻り光でも測定が可能なことがわかった。更に、内耳組織のような生体振動の観測に対する応用可能性も検討し、実験による原理確認を行った。また、システムの周波数特性を考慮した信号処理により、測定可能な振動周波数を更に50 MHzまで拡大することに成功した。
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