平成28年度には平成27年度に残された「中赤外画像システムの完成」と、全システムを用いた「環境シミュレーション実験による提案手法有用性実験」を行った。 1.中赤外画像システムの完成:セラミックヒーターの中赤外光源、共焦点系から成る結像系、空間冷却フィルタと水銀カドミウムテルル検出器からなる中赤外検出システムを完成した。試料を二次元掃引して画像化を行う。それに伴う画像化プログラムを作成した。 2.実験:超広帯域(X線、可視、近赤外、中赤外、熱赤外、テラヘルツ)スペクトル変化による植物の成長や脱水化による状態変化の抽出を試みた。植物試料に、年間を通じて入手しやすい「レッドロビン」葉、季節変化が少ない「アオキ」葉、変化の大きい「クヌギ」葉、その他を用いた。 3.①「レッドロビン」葉画像結果:X線では40kV透過画像より葉脈分布が得られた。可視では光化学的分光反射指数(570nm-531nm)/570nm+531nm)の画像を得た。近赤外では葉水分指数指標1300nm/1460nmの画像を得た、中赤外では2.5-8μm画像、熱赤外では7.5μm-13μm画像を得た。②「アオキ」「クヌギ」葉計測結果:「アオキ」葉と「クヌギ」葉のテラヘルツ100-86μm(0.5-3.5THz)間の吸収スペクトルを得、生葉と枯葉の吸収スペクトルの違いが明らかとなった。 4.考察と今後の方針:「中赤外画像計測」システムの完成により、X線からテラヘルツに渡る超広帯域全域スペクトル計測システムが完成した。また各スペクトルが有する植物情報の取得が行われた。テラヘルツ以外は全て画像化に成功した。今後は生育条件を変化させた植物試料を各種用意して、全スペクトル(の差)に生育条件を紐付け調査を行う事により、最終目標である植物健康診断法が確立される。その基盤となる研究成果を達成することができた。
|