研究課題/領域番号 |
15K14003
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
足立 善昭 金沢工業大学, 先端電子技術応用研究所, 教授 (80308585)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 計測システム / 微小磁場計測 |
研究実績の概要 |
本研究はフラックスゲートやGMRなどの室温で動作する高感度磁場センサを用いた計測システムを開発し、シャーレの中の細胞の活動に伴って発生する微弱な磁場を検出し、細胞の活性を評価する技術の確立を目的としている。これらの室温センサは超電導量子干渉素子(SQUID)を用いたセンサよりも磁場分解能が劣るが、SQUIDよりも試料に近接させることができるので、比較的大きな信号が得られ、かつ、ランニングコストが安いので繰り返し実験ができるという利点がある。さらに多チャンネル化と試料に微小振動を与える機械的変調法を組み合わせて、不足する磁場分解能を補う。 平成27年度はまず本研究に先駆けて作成された16chの直交型フラックスゲートアレイの校正を実施した。校正の結果、個々のセンサが概ね20pT/rtHz程度の磁場分解能を持つことがわかった。また、機械的変調について、ピエゾアクチュエータを用いた1軸の揺動装置と、試作したシングルチャンネルの直交型フラックスゲートによる実験系を構築し、シミュレーションで確認された信号雑音比の向上を実験的に検証した。 一方、従来アモルファス磁性体ワイヤコアを用いた直交型フラックスゲートを試作し、これをセンサプローブとして適用してきたが、測定の再現性の確保が困難な場合があった。市販の磁気インピーンダンス(MI)磁気センサを購入して、機械的変調式顕微鏡のプローブとして試験的に適用したところ、外装に工夫をすれば、本研究の用途に適用可能なことがわかった。品質管理された市販のMIセンサを適用することにより、多チャンネル化が容易になること、また、磁場分解能が10pT/rtHz@10Hzと十分であることから、MIセンサによるセンサプローブについても検討を進めた。 センサプローブをMIセンサに交換後、センサのキャリブレーションを実施し、機械的変調が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、本研究実施に先駆けて行った予備実験で得られた、変調周波数の2倍高調波成分に着目することにより分解能が向上するという結果について、さらに定量的な実験で確認し、測定時間と信号雑音比の関係や、変調周波数、測定点間隔などの最適パラメータを決定することを平成27年度の主眼としていた。シミュレーションで確認された磁場分解能の改善の実験的な確認を進めていたが、並行して市販の磁気インピーダンス(MI)センサについての評価を行い、センサプローブへの適用可能性を検討した。当初はセンサコアが樹脂ケースにパッケージされているため、磁気顕微鏡のセンサプローブとしては不向きであると考えていたが、外装に加工を施すことによって、センサコアを露出させれば、センサプローブに適用が可能となることがわかった。そこで、センサプローブに新しいセンサを適用するために、センサのキャリブレーションや機械的変調の調整について再度やり直しを行ったので、計画に遅れが生じてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は平成27年度に試作した機械的変調式の磁気顕微鏡を多チャンネル化し、得られた磁場データから変調成分を抽出して試料の磁気イメージングを行うソフトウェアの開発を行う。また、試料として細胞を測定する前の準備実験として、あらかじめ微小コイルや磁性微粒子などで磁場分布が予測できる人工的な試料を作成し、磁気イメージングが適切にできること、磁場分解能、空間分解能などが設計から予想される性能を有することを確認する。 性能確認後に実際に細胞から発生する磁場の測定を試みる。測定は2005年より研究協力関係にある京都府立医科大学に装置を持ち込んで、同大学で作成された細胞などの生体由来試料を対象として行う予定である。 また、並行して機械的変調式磁気顕微鏡の他方面への応用についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は非磁性ステージを特注するために60万円を計上していたが、新しいセンサをセンサプローブに適用するなどで設計が遅れ、研究所に既存のステージで代用していた。そのため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度導入予定だった非磁性ステージを購入する予定である。
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