本研究はフラックスゲートやGMRなどの室温で動作する高感度磁場センサを用いた計測システムを開発し、シャーレの中の細胞の活動に伴って発生する微弱な磁場を検出し、細胞の活性を評価する技術の確立を目的として実施した。これらの室温センサは超電導量子干渉素子(SQUID)を用いたセンサよりも磁場分解能が劣るが、SQUIDよりも試料に近接させることができるので、比較的大きな信号が得られ、かつ、ランニングコストが安いので繰り返し実験ができるという利点がある。多チャンネル化と試料に微小振動を与える機械的変調法を組み合わせて、不足する磁場分解能を補い、細胞の活動に伴う磁場の検出を狙った。 平成28年度は、まず前年度までに作成した16ch直交型フラックスゲートアレイをプローブに用いた場合と、市販の磁気インピーダンス(MI)磁気センサをプローブにした場合について、磁場分解能、空間分解能の見地から比較・検討を行った。市販のMIセンサ単体をプローブとした場合、空間分解能の比較的高い測定が可能で、多チャンネル化も容易であるが、複数のセンサを配置したセンサアレイとして構成した際に、センサ間の距離を最適にすることが困難で、時間変化のある試料を対象とする場合は、当初の計画通り、16ch直交型フラックスゲートセンサアレイを使用することとした。 次に、当初の予定では、性能評価ののち、研究協力関係にある京都府立医科大学に装置を持ち込んで、同大学で作成された細胞試料を対象として測定を行う予定であったが、細胞の準備、倫理審査に予想外に時間がかかることがわかり、代替として細胞由来の信号と同等の帯域で時間変動する磁場源を人工的に模擬して、磁気イメージング測定を行った。 空間分解能を維持した状態で時間変動する磁気分布のイメージングに課題を残すが、当初計画していた機械的変調式磁気イメージング法確立の指針を得ることができた。
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