研究課題/領域番号 |
15K14009
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
中村 文一 東京理科大学, 理工学部, 講師 (70362837)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 制御工学 / 電気機器 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,炭化ケイ素(SiC)に代表される次世代半導体素子を用いる際の新たな制御法を開発することである.本年度は,目的を達成するために,SiC-MOSFETスイッチング素子を利用した超音波モータ用2相インバータを開発した.開発したインバータは低発熱かつ小さい出力歪みを達成するなど高い性能を示した.従来のシリコンMOSFETを用いた超音波モータ用インバータは発熱が大きいためヒートシンクや冷却用のファンが必要であったが,SiCインバータでは長時間動作を行っても発熱が小さく冷却用機器が必要ないことが確認できた.SiC-MOSFETはゲート駆動電圧が比較的高く,またゲート寄生容量も比較的大きいためスイッチング時のゲート電荷を効果的に引き抜くことが重要になる.本研究では,ゲート駆動回路の誘導成分が制御性能に大きな影響を与えることを明らかにできた. 従来のシリコンMOSFETを用いたインバータの周波数駆動制御において,超音波モータは出力を回転角速度として1次遅れないし2次遅れでモデル化されることが多かった.これに対し,SiC-MOSFETを用いたインバータではオーバーシュートなく1サンプル時間内(100マイクロ秒未満)で定常回転角速度に整定することが確認できた.以上より従来とは異なり超音波モータのSiCインバータ制御システムにおいては,角速度を入力とみなせることを明らかにできた.超音波モータの制御性能面では,従来のシリコンMOSFETを用いたインバータでは,スイッチング素子に大きな負荷を加えるスライディングモード制御を行った際に素子が破損する事例が多く確認されたが,SiCインバータではスライディングモード制御を行った際にも安定した動作を確認することができた.以上より,SiCスイッチング素子はスイッチング制御法の設計自由度を大きく拡大することが確認できた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SiC-MOSFETを用いたモータ駆動回路の製作に想定より時間がかかってしまい計画通りの進捗が得られなかった.
|
今後の研究の推進方策 |
市販のSiCインバータを導入することにより,埋込永久磁石同期電動機の制御性能を調査する.また,SiCインバータの高速なスイッチング性能を活かした制御法の開発を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
SiC-MOSFETを用いたモータ駆動回路の製作に想定より時間がかかってしまったため次年度使用額が生じた.
|
次年度使用額の使用計画 |
埋込永久磁石同期電動機駆動用SiCインバータを製作予定であったが,市販のSiCインバータを用いて研究を実施する.そのため,本年度はSiCインバータ導入のための予算を計上している.
|