本研究の目的は,炭化ケイ素(SiC)に代表される次世代半導体素子を用いる際の新たな制御法を開発することである.本年度は,目的を達成するために前年度に開発した,SiC-MOSFETスイッチング素子を利用した超音波モータ用2相インバータの制御性能について研究を進めた.本年度は,開発したインバータと回路パターンが同じで,素子の入れ替えのみで実現したシリコンMOSFETを用いたインバータを用いて比較実験を行った.開発したSiCインバータはシリコンインバータと比較しては低発熱かつ小さい出力ひずみを達成するなど高い性能を示した.同じ回路パターンを用いてもシリコンMOSFETを用いた超音波用インバータは発熱が大きく冷却装置なしでは連続動作できなかったが,SiCインバータでは長時間動作を行っても発熱が小さいことが確認できた.また,SiCインバータとシリコンインバータの消費電力の比較を行い,SiCインバータの消費電力が10%小さいことが確認できた.また,制御装置に大きな負荷を与えるスライディングモード制御を連続的に使用してもSiCインバータは破損することなく動作することを確認できた一方,シリコンインバータでは電流応答が安定せず,制御性能が低下したことがわかった. 本年度は,さらに永久磁石同期電動機駆動用にSiCインバータを導入して評価試験を行った.予備試験のみの結果ではあるものの,SiCの高速スイッチング性能により,これまでに申請者らが提案していた動的銅損最小化制御法における問題点であったトルク制御性能が大きく改善したことを確認できた.
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