研究課題/領域番号 |
15K14017
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齊木 功 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40292247)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 均質化法 / 剛体回転 / せん断剛性 / 複合構造 / ずれ止め / 合成桁 / 接触解析 / 弾塑性 |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績は主に以下の2点である. 1.再現解析 土木研究所によって実施されたI 形断面の鋼桁をRC壁に埋込んだ複合構造の結合部の実験の再現解析を行った.本研究の有限要素接触解析では,接合部における界面の付着と摩擦が接合部の耐荷メカニズムに及ぼす影響に着目し,ずれ止めの無い実験ケースの再現を主に試みた.その結果,付着力が全く無いか,もしくは付着破壊が発生しないと仮定した場合に比べ,本研究のように付着破壊を考慮することで耐荷力をより精度よく評価できることがわかった.ずれ止めの無い接合部では,ずれ止めを有する接合部に比べ付着強度が耐荷挙動に及ぼす影響が大きい.ただし,ずれ止めを有する接合部でも,付着強度が耐荷挙動に及ぼす影響は確認された. 2.非均質梁の平均物性評価法の開発 微視構造を持つ梁の平均物性評価のための周期境界条件および剛体回転拘束の方法を提案していたが,補剛材のような薄い凹凸がある場合にせん断剛性が過小評価される問題が見出されていた.これに対し,現時点で2通りの解決策を提案した.一つは,代表体積要素に対して純せん断ではなく曲げせん断を与え,変位による断面回転拘束の代わりに純曲げ時の反力を外力として与える方法である.これによれば,変位による回転拘束に比べ良い精度でせん断剛性が評価できる.しかし,曲げ剛性が長さ方向に極端に変化する場合に,精度が低下することがわかった.二つ目の解決策としては,問題が梁軸方向変位の梁軸直角方向の分布に起因することがわかったため,梁軸方向変位を面外せん断とせん断遅れによるものに分離する方法であり,まだ検討が必要ではあるが適切にせん断剛性を評価できる見通しを得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度,新たに発見された2つの問題点 1)補剛材のような薄い凹凸がある場合にせん断剛性が過小評価される問題 2)付着破壊に伴う不つり合い力が大きくなると非線形方程式を解くための繰り返し計算の収束性が悪化する に対してある程度の解決策が提案できた.ただし1)に関しては純曲げをあきらめて応力境界条件を用いて評価するか,あくまでも純曲げでの評価方法を改善すべきかは結論が得られていない.また,同様に予定していた要素試験の境界条件の影響評価に関しては,スタッドの押し抜き試験に関してのみ実施することができたが,十分なデータが得られたとは言えない状況である.このことから,本研究で本年度に予定していた数値要素試験の精度検証に関しては,70%程度の進捗である. また,予定していた実物に近い異種部材接合部の実験結果を入手し,本研究で構築した界面を考慮した複合構造有限要素解析の検証を行うことができた.本手法の結果は実験結果と比較しておおむね妥当な予測が可能であったが,付着特性のばらつきやコンクリートの局所的な変形の再現性が課題として残された.コンクリートの局所的な変形の再現は,本研究の主要な目的ではないが,目的とする複合構造の数値性能評価の精度向上のためには必要な課題であると認識している.
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今後の研究の推進方策 |
概ね当初の計画通りであるが,上で述べた通りせん断剛性が過小評価される問題の解決を含め,以下のように研究を継続する予定である. せん断剛性が過小評価される問題については,応力境界と曲げせん断によりある程度の精度の解は得られることがわかったが,純せん断と変位による剛体回転拘束に基づくせん断剛性評価の完成を目指す.過小評価の原因が梁軸方向変位の梁軸直角方向の分布であることがわかったため,梁軸方向変位を面外せん断とせん断遅れによるものに分離する方法を構築する.せん断遅れ変位を除去するために,面内せん断変形を拘束する方法を試みる. 次に,ここまでで構築した数値要素試験を用いて,実際の複合構造中で想定される,任意の曲げモーメントおよびせん断力の組み合わせによる応力状態における合成梁や板の非線形挙動を解析し,それらの相互作用を明らかにする.具体的には,合成梁であれば,正曲げや負曲げ,またその大きさによってずれ止めを含む合成梁の耐荷力や荷重ーずれ変位関係が影響を受けることを予想しており,その定量的な評価を行う.この結果を申請者の過去の研究や,研究協力者等による複合構造物の大型模型実験の結果と比較し,その妥当性を検証するとともに,本手法のさらなる高精度化を行う.
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