研究課題
平成29年度は、まず、これまでの知見を基に、高調波・分調波いずれの発生機構を明確にすることを行った。高調波発生機構については、これまでに研究代表者らによって境界要素法を用いて明らかにされてきたが、実用面を考えると、多大な計算時間が必要となるため、必ずしも得策ではない。そこで、本研究では、粒子法と呼ばれる最新の数値解析手法を用いて、き裂の開閉口等に伴い発生する高調波をシミュレーションすることを行った。これにより、境界要素法と比べて比較的容易に、手軽に非線形超音波シミュレーションを実行できることとなった。一方、分調波については、これまで同様、時間領域境界要素法を用いて発生メカニズムを解明することに挑戦した。ここでは、sin関数型のき裂や平行配置された2つの直線き裂に対して、き裂の開閉口等を考慮した超音波散乱シミュレーションを行った。その結果、入射波の中心周波数に対して半分の周波数のねじり振動、もしくは曲げ振動を強制的に発生させるような非線形共振が発生することが確かめられた。これより、分調波の発生現象は、き裂の幾何学形状や配置に強く依存していることが明らかとなった。また、時間領域に対応する周波数領域の境界要素法シミュレーションを実行することで、き裂を含む線形系の周波数応答の第一ピークと分調波発生の可否には関係性があることを示す結果も得られた。すなわち、分調波が発生する場合は、第一ピークに対応する周波数の2倍以上の周波数の入射波に対して分調波が発生することが確かめられた。一方、非線形超音波法において検査対象となるき裂のような面状欠陥を画像化することも重要な課題である。そこで、本研究では、未知のき裂の位置や形状を特定するための逆散乱解析手法を開発することを行った。数値解析例より、入射超音波がき裂面に直接当る部分に対しては、精度良くき裂形状や位置等を再構成することができた。
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