研究課題/領域番号 |
15K14019
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
廣瀬 壮一 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (00156712)
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研究分担者 |
古川 陽 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (60724614)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 空気超音波 / 最適設計 / ダイシング技術 / 有限要素法 / 非接触非破壊検査 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,非接触非破壊探傷手法である空気超音波法に対して,最適な超音波探触子の設計・製作を行い,実際の土木構造物の検査において有効な探傷条件を構築することである.空気超音波法は非接触で検査を行うことができ,効率的な検査が可能であるが,空気と固体の音響インピーダンスの差が大きいため,これまで十分な送受信感度が得られず,その適用範囲は複合材料などに限定されてきた.空気超音波探触子では振動子である圧電体-空気間での大きな音響インピーダンス差を緩和するために整合層と呼ばれる材料を挿入するが,本研究では最適化計算を用いて整合層を設計することにより,高出力の探触子を設計し,空気超音波法の性能向上を図る.そのために,平成27年度においては有限要素法を用いた数値シミュレーションを行った.まず,一次元有限要素法を用いて整合層の材料定数をパラメータとした数値計算を行い,最適な整合層の層厚や材料定数を求めた.しかし,このように得られた材料定数を持つ材料には密度が非常に小さく必ずしも実際には存在しない解も含まれた.そこで,実存する材料に対してダイシング技術を用いた形状加工によって整合層の見かけ上の密度を変化させて最適な整合層を作製する方法を発案した.このために,ダイシングによる一格子分を一ユニットとした周期構造モデルを用いた3次元有限要素解析を行い,ダイシングにおける切込み間隔,幅及び深さを変化させ,現存する材料を用いた整合層の最適化を図った.その結果,少なくとも現存する探触子の2倍の高出力を有する探触子を製作できることがわかった.ただし,このように設計し,試作した探触子による超音波波形は不安定なものとなり,実用上の課題が残った.そのため,さらなる探触子の試作および実験による検証は平成28年度に持ち越すこととした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
有限要素法を用いた最適設計によって,空気超音波探触子の整合層の最適化を図った.その結果,少なくとも現存する探触子の2倍の高出力を有する探触子を製作できることがわかったが,このように設計し試作した探触子による超音波波形は不安定なものとなり,実用上の課題が残っている.そのため,さらなる探触子の試作および実験による検証を平成28年度に持ち越すこととした.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に設計し試作した探触子に実用上の課題が残ったため,さらなる最適設計を行い,高出力で,かつ,安定した波形を発生できる探触子の試作および実験による検証を実施する.また,当初予定していた平成28年度の課題である形状加工によるフォーカシングと焦点域での性能向上,および,コンクリート供試体を対象に空気超音波法の最適な探傷条件の検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
有限要素法を用いた最適設計によって,空気超音波探触子の整合層の最適化を図った.その結果,少なくとも現存する探触子の2倍の高出力を有する探触子を製作できることがわかったが,このように設計し試作した探触子による超音波波形は不安定なものとなり,実用上の課題が残っている.そのため,平成27年度に予定していたさらなる探触子の試作および実験による検証を平成28年度に持ち越すこととした.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に設計し試作した探触子に実用上の課題が残ったため,さらなる最適設計を行い,高出力で,かつ,安定した波形を発生できる探触子の試作および実験による検証を実施する.次年度使用額はそのための探触子の試作および実験に用いる.また,平成28年度に請求した助成金は当初の計画通り,探触子の性能向上と探傷条件の検討のために用いられる.
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