研究課題/領域番号 |
15K14024
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
野村 卓史 日本大学, 理工学部, 教授 (50126281)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 風災害 / 飛来物 / 衝撃力 / 構造流体連成解析 / 有限要素法 / 風洞実験 / 圧電型ロードセル / 3Dプリンタ |
研究実績の概要 |
強風災害の被害を拡大させる要因である飛来物の飛翔挙動および衝突時の衝撃力を評価するために,数値流体解析法の開発と解析法を検証するための風洞実験を実施する研究計画である。 本年度は,昨年度に着手し一定の成果を挙げた風洞実験法をベースに,より系統だった実験を実施することに支持したアルミ板に試験体を落としたときのロードセルからの出力信号から衝撃力と衝突位置を評価する方法を確立した。(2) 当初計画どおり,球形模型を 3Dプリンタによって製作し,同じ外径と質量を有するが,重心が中心にある球と,重心が偏心している球の2つを作成した。(3) 2つの模型を風洞内で風によって飛ばし,アルミ板の上に落下させる実験を行い,衝撃力の測定,高速度ビデオカメラによる飛翔挙動の撮影を行った。偏心球では重心位置が球の中心の上にある場合と下にある場合の2ケースの実験を行った。その結果,重心が球の中心にある球の飛翔軌道と衝撃力は安定しているのに対し,偏心球の飛翔軌道と衝撃力はばらつく傾向にあることが分かった。また飛翔中の球の回転状況も異なることが分かった。 数値流体解析法の開発に関して,物体の回転挙動を導入することが必要であることから,本年度は物体が回転しながら飛翔する状況が妥当に解析できることを目指す検討を行った。物体は立方体とした。その結果,回転する物体周りの空気力の作用により,野球のボールのカーブ等と同様の飛翔挙動を示す解析結果を得ることができ,回転運動の扱いが妥当であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に新規に着手した風洞実験法を用いて系統だった飛翔実験を実施することができた。昨年度の経験を踏まえ,圧電型ロードセルの出力波形の処理等に関して大きな障害のない測定を行うことができた。また,形状と質量が同じだが重心位置が異なる実験模型を用いた飛翔実験をすることが本研究の独自のアイデアであるが,本年度はその意図どおりの球模型を3Dプリンタによって製作することができたことが大きな成果といえる。重心位置の異なる球の飛翔実験を実施して,偏心の影響が飛翔軌道や衝撃力に影響することを見出す,という成果を挙げることができた。 数値流体解析法は気体中の3次元運動を解析することを目指し,その基礎的段階について研究成果を挙げることができた。 以上を総合して,本年度はおおむね順調に進展したと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる平成29年度も数値流体解析法の開発と風洞実験を並行して進める当初計画に変更はない。風洞実験では,偏心球を風洞気流の中で落下させる実験をより詳細に実施すること,および立方体など球以外の基本形状の模型を3Dプリンタで製作し,それによる実験を実施する予定である。数値流体解析法では,気体中の3次元運動を本格的に解析するために必要な sliding interface を流体解析において実現し,風洞実験を対象とする解析を実施することを目指す。風洞実験と数値流体解析の成果を総合して気流中の物体の飛翔挙動と衝撃力に関する基礎的な知見を獲得する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では第2年度にあたる平成28年度に3Dプリンタを購入し,風洞実験用模型を製作する予定であった。しかし平成27年度に実施した風洞実験結果から,製作する模型に要求される精度が当初の想定よりも高くなければならないことがわかり,その要求性能を満足する3Dプリンタは科研費の交付予定額を越えるものであったため,3Dプリンタは所属機関の通常経費で調達した。科研費からは3Dプリンタ用消耗品(プリンタインクの樹脂等)を支出した。その結果,支出額が当初予算より少ないこととなったものである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は新たな実験模型を 3D プリンタで製作し,系統的な風洞実験を実施する。3Dプリンタ用消耗品(プリンタインクの樹脂等)は高価なので,次年度使用額をその購入に充当する計画である。
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