研究課題/領域番号 |
15K14027
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
内村 太郎 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60292885)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 液状化 / 砂質土 / 管内流れ / 下水管 / 模型実験 |
研究実績の概要 |
東日本大震災では、地震で下水管の周囲が液状化した場合、管路の破損箇所から管路内に土砂が流入し、管路を閉塞した。下水管の液状化被害として、埋戻し土の液状化による変位や破損は広く認知され、対策も進んでいる。しかし、管路内に流入した土砂による変速は、ほとんど研究されていない。本研究は、管路に流入した液状化土砂が、管内を流れるときの性質を、模型実験により明らかにし、その対策を検討する。 平成27年度は、液状化した硅砂を蓄えるタンクに、傾斜した管路が接続された小型模型を製作し、全体に振動を加えて液状化を起こし、管路内の砂の流動を観察した。管路の傾斜、長さの組み合わせを様々に変えた実験から、1)液状化砂の管路内流動は、振動が加わっているときだけ進むこと(従って、本震および余震で揺れている時間だけ、管路の閉塞が進む)、2)管路の傾斜を小さくすれば、砂の流動量は抑制できること(一般的な下水管の勾配3%に対して、一部だけ勾配を0にすることで、流動量を減らせる)、3)管路の中に遮蔽板を設けることで、その形状に応じて、流動量の抑制効果が得られること、を示した。 平成28年度は、これらの成果を発表したほか、実験装置に改良を加えた。1つは、液状化砂を供給するタンクの水位が、砂の流下とともに低下し、流動の駆動力が変化してしまうことから、タンク底部の圧力計で、その水頭を監視し、またタンクの大きさと形を工夫して水位の変化を少なくする工夫をした。また、砂の流動量を、管路の出口で採取した砂の重量で評価していたが、これは時々刻々変化する砂の流動速度を直接測ることにならないため、砂の移動を可視化して速度を把握する工夫をした。 ただし、研究者の異動により進捗が遅れたため、ひきつづき、平成29年度に期間を延長し、本研究を完成させる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年度の中間の10月に、代表研究者が所属する大学を異動し、装置の移設と環境整備、および実験を担当する学生の新規割り当てが必要になったため、進捗が遅れた。2016年度は、2015年度の成果をまとめて発表したほか、装置の改良と追加実験を行った。2017年度になり、環境が整ったので、研究を再開して完了させる。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度に、実験装置に改良を加えたので、これを用いて液状化砂の管路流動の実験を行う。既述の通り、改良点は、1つは、液状化砂を供給するタンクの水位を一定に保つための工夫、もう1つは、管路の各部で時々刻々変化する砂の流動速度を可視化して直接測る工夫である。 まず、改良によって精度の良い実験を行い、2015年度に得られた結論を再検証する。次に、管路の傾斜とタンクの水頭を様々に変えた実験を行い、液状化した砂の基本的な性質として、これを粘性流体としてみたときの粘度の評価を行う。液状化した地盤の粘性係数については、地震時の実構造物の挙動記録や、各種の模型実験、要素実験から、幅の広いさまざまな値が報告されているが、本研究の方法で測定した例はなく、新しい知見を得ることができる。 また、2015年度の結論として得られた、管路の傾斜角と砂の流動量の関係、とくに管路の一部の勾配を小さくすることの効果を検証する。 また、管路の途中に遮蔽板、あるいは管の形状に変化を付けて、液状化砂の流動量を制御する方法についても、より詳しく検討する。特に、遮蔽板の周囲の有効応力、全応力の測定を行って、液状化砂が流体として流れる場合、および閉塞して固体化する過程のメカニズムを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度の中間の10月に、代表研究者が所属する大学を異動したため、装置の移設と実験環境の整備、および実験を担当する学生の新規割り当てのために進捗が遅れた。2016年度は、2015年度の成果発表と、実験装置の改良、追加実験を一部行ったが、2017年度になり環境が整ったので、本年度で研究を完了する。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度に、実験装置に改良を加えたので、これを用いて液状化砂の管路流動の実験を行う。実験に用いる砂を新たに調達する。また、管路の傾斜や、タンクの水位、遮蔽板の形状など、実験条件をより細かく設定して実験を行うため、それぞれの模型部品などを製作する。また、遮蔽板の周囲の有効応力、全応力を詳細に測定するためのセンサーと測定系を整備する。
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