研究課題/領域番号 |
15K14030
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岸田 潔 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20243066)
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研究分担者 |
菊本 統 横浜国立大学, その他の研究科, 准教授 (90508342)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 岩盤工学 / 地盤工学 / フラクチャーの劣化と回復 / 三軸試験 / 構成則 / 断層の繰返しメカニズム |
研究実績の概要 |
本研究では,従来,速度・状態依存摩擦のみに着目してきた地震工学における断層すべりについて,堆積岩を用いた三軸せん断-保持-せん断試験により,岩石摩擦(岩石内のせん断帯の形成とその摩擦挙動)-ダイレーション-間隙水圧(有効応力)のインタラクションの帰結として断層すべりの再検討・再評価を行う.また,せん断-保持-せん断過程で発現する強度回復・劣化現象を限界状態モデルの拡張で再現することを目指す. き裂面を有する比較的軟らかい凝灰岩に対して種々の条件下で排水三軸せん断試験を行い,残留状態においてせん断-保持-せん断過程を実施した.実験は,人工的に60 度の切断面を挿入した供試体を用いて行った.拘束圧0.3 および5.0 MPa の実験では強度回復現象が確認できなかったが,0.7 MPa の実験においては強度回復現象が確認できた.三軸せん断SHS 過程での強度回復現象の発現は,明瞭なせん断帯の発生と関連するとしてきた1) ~ 3).切断面を挿入すると,低拘束下での強度回復現象の発現は確認されたが,応力状態と切断面の角度によっては,発生しないことも考えられる.一方,高拘束圧下では,切断面に沿う破壊とならず少し樽型に変形した.これは,切断面の存在しない実験結果と同様の傾向であった. モデルによる再現では,Dieterichの対数線形モデル実験結果を整理を行い,それに沿って保持時に限界状態線がシフトすることを降伏関数に状態変数を導入したモデルを提案し,実験結果のシミュレーションを行った. また,次年度に向けて三軸装置の改良をおこなうとともに,ベレア砂石を用いて三軸せん断-保持-せん断試験の準備を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
き裂面を有する比較的軟らかい凝灰岩に対して種々の条件下で排水三軸せん断試験を行い,残留状態においてせん断-保持-せん断過程を実施した.実験は,人工的に60 度の切断面を挿入した供試体を用いて行った.拘束圧0.3 および5.0 MPa の実験では強度回復現象が確認できなかったが,0.7 MPa の実験においては強度回復現象が確認できた.三軸せん断SHS 過程での強度回復現象の発現は,明瞭なせん断帯の発生と関連するとしてきた1) ~ 3).切断面を挿入すると,低拘束下での強度回復現象の発現は確認されたが,応力状態と切断面の角度によっては,発生しないことも考えられる.一方,高拘束圧下では,切断面に沿う破壊とならず少し樽型に変形した.これは,切断面の存在しない実験結果と同様の傾向であった. モデルによる再現では,Dieterichの対数線形モデル実験結果を整理を行い,それに沿って保持時に限界状態線がシフトすることを降伏関数に状態変数を導入したモデルで表現することを実施し,実験結果のシミュレーションを行った. また,次年度に向けて三軸装置の改良をおこなうとともに,ベレア砂石を用いて三軸せん断-保持-せん断試験の準備を進めている.ベレア砂岩の一軸圧縮試験およびX線CTによる試験体の撮影は終了している.
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今後の研究の推進方策 |
凝灰岩での三軸せん断-保持-せん断試験は実施せず,ここまでに得られた結果の整理・分析を行う.特に,速度・状態依存摩擦則による分析を行う.さらに,モデル化においては,既に実施してきた降伏関数に状態変数を導入することで限界状態線を変動させるモデルを用い,速度・状態依存摩擦則での整理した実験結果の適用を行う. ベレア砂岩での三軸せん断-保持-せん断試験を実施する.凝灰岩と同様,実験結果の整理・分析を行い,限界状態モデルの拡張により,せん断-保持-せん断過程での強度回復・構造劣化現象の再現を行う. さらに,ダイレイタンシー挙動を説明できる構成モデルのDieterichの速度・状態依存摩擦則への適用性の検討を行い,断層の強度回復・構造劣化についての議論を行う.
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