研究課題/領域番号 |
15K14031
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
勝見 武 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (60233764)
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研究分担者 |
乾 徹 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (90324706)
FLORES Giancarlo 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80598996)
高井 敦史 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (30598347)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 廃棄物処分場 / 跡地利用 / 環境地盤工学 / 地盤材料特性 / 高度利用 / 持続可能性 |
研究実績の概要 |
本研究は、廃棄物処分場の跡地利用を促進するための社会的・技術的フレームワークの構築を最終的な目標とし、海面処分場固有の廃止基準の考え方と持続可能な海面処分場の跡地利用形態について、科学的知見に基づき提案を行うことを目的とする。 平成27年度は、海面処分場跡地の廃棄物層、底部粘土(遮水)層を貫通する杭打設による環境影響を評価し、1) 圧密係数が小さい地層や過剰間隙水圧の消散の遅い深さにある粘土層ならば、埋立終了時の有効応力の大きさの1.0~3.5倍まで増加すること、2) 杭と粘土層境界面を模擬して設けた金属セルと供試体の隙間は、供試体径の1/80~5/80程度の大きさであれば、圧密降伏応力付近の大きさの鉛直荷重をかければ隙間は閉塞すること、3) 境界面の遮水性能を換算透水係数により評価したところ、圧密降伏応力付近の鉛直応力が作用すれば構造基準を満たすこと、4) 杭打設時に杭と粘土層境界面に生じる空隙厚が大きいほど、空隙の閉塞はしにくくなること、5) 高塑性である粘土試料であれば、過圧密領域においても初期空隙厚は閉塞し境界面の漏水が抑制される場合があること、等を数値解析と各種実験により明らかにした。 また三軸圧縮試験により、廃棄物地盤の非排水せん断強度は250kPa~650kPa程度であり、材齢が長くなるほど強度が増加することや、供試体寸法を大きくすると内部摩擦角が小さくなること等を明らかにした。さらに廃棄物地盤の地中蓄熱層としての利用を想定し文献調査を行った結果、非排水条件下では間隙水の膨張に伴い間隙水圧が上昇し、過剰間隙水圧は拘束圧に対して最大で0.8程度となることを示した。温度上昇に対する挙動は試料により異なるものの、対象粘土の塑性指数と関係があることを明らかにし、温度変化により発生しうる間隙水圧の予測評価モデルを提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、廃棄物処分場跡地で利用しうる既存の個別技術のフィジビリティと廃棄物地盤への影響を評価することを目的とし各検討を行った。底部粘土層を貫通する鋼管杭打設により環境影響については、これまで研究代表者らが実施してきた過去の研究成果も踏まえて体系的なとりまとめを行い、対象粘土の材料特性と空隙の閉塞程度の一般化を行った。廃棄物地盤の材料特性評価を通し、廃棄物海面処分場跡地に期待できる支持力と適用すべき基礎構造を明らかした。さらに、温度変化が軟弱地盤の物性変化に与える影響の解明は、地中蓄熱層として利用した場合の廃棄物地盤の構造変化について示唆を与えるものである。これらの一連の成果は、廃棄物海面処分場跡地の持続可能な利用シナリオを考える上で重要な基礎データとなるものであり、制度設計への貢献も期待できることから、当初予定通り順調に推移していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
廃棄物海面処分場の高度な跡地利用が進んでいない要因としては、処分場や地盤汚染に関する環境規制の強化、廃棄物層安定化の長期化、維持管理費の増大や、そもそも廃止基準が厳しく廃止できないことが大きな要因であり、長期に及ぶ維持管理が処分場運営主体の大きな負担となっており、持続可能な跡地利用策が求められている。平成28年度は、化学的な側面から補完しつつ廃棄物地盤の特性化を継続して行うとともに、想定される様々な利用シナリオで考慮すべき廃棄物地盤や底部粘土層への影響や、対策・モニタリング技術に関するとりまとめを文献調査等により行い、環境安全性を担保しつつ跡地利用を促進しうる社会的、技術的フレームワークの提案を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、文献調査、既往研究成果の取りまとめと一般化を重点的に行ったため当初予定より支出が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、スケール効果を考慮した廃棄物地盤の特性評価を中心とした各種室内試験の実施、さらに平成27年度に得られた成果の国内外の各種学会での対外発表を行う予定であることから、次年度使用額はそれらに充当する。
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