本研究は,近年流体力学分野で著しく発展した拡散界面モデルを応用し,任意粗度をもつ任意勾配地形上の津波遡上波先端の挙動と局所流れの力学的特徴を適切に反映し,動的な浸水域変化の厳密な評価を可能とする自由水面先端境界条件モデルを開発するものであり,未熟な現行モデルの使用によって遡上流れの正しい再現が阻害されることなく将来期待される浸水域の土砂や瓦礫の輸送,底面浸食等の高度な予測を保証するものである.平成29年度に行ったタスクに対して以下の成果を得た. タスク1 遡上波先端を含むダムブレーク流れの三次元水面形状遷移を数値化するため,プロジェクターから物体に照射したカラーブロックの反射パターンから3次元水面形状を再構成する画像計測技術の高度化を進めた.2台のカメラを使った新たな計測アルゴリズムを構築し,従来の計測法による精度を著しく向上させ,波浪の水面形計測を容量式波高計と同等の精度で動的3次元計測を可能とすることを検証した. タスク2 非平衡界面に対して気体液体の自由エネルギー,表面エネルギーを拡散界面中の状態量によって近似し従来の静的平衡接触角を使うことなくプリミティブに動的接触角をもつコンタクトラインを計算可能な拡散界面モデルにより,動的な気液間運動量交換による気液界面の更新を矛盾なく再現可能であることが明らかになった. タスク3 2011年東北津波を対象に,動的な計算格子解像度の変化を可能とするAMR,物理量の特性曲線に沿った移流計算を近似するCIP法を組み合わせた新たに開発した掃流砂-長波連成計算を使用し,津波遡上計算における解像度依存性と地形浸食堆積過程への影響を明らかにした.
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