研究実績の概要 |
H27年度は、石灰岩帯水層中の地下水中のCa濃度の時間変化R(モル/L/年)をとらえるため、沖縄本島南部琉球石灰岩帯水層分布地域を対象に、石灰岩層中のCO2ガス土壌分圧, Ca濃度, 石灰岩層中の鉱物の飽和度そして地下水の滞留時間および地下水流速の測定を実施した。その結果、以下の成果が得られた。 1)琉球石灰岩帯水層の井戸水は流動性と滞留性の2種類に大別でき, 本研究では滞留性の地下水が多く存在することがわかった. CFCsおよびSF6による年代測定の結果から地下水の滞留時間はおよそ0年から25年の範囲にあると考えられる。 2) 流動性の井戸水では、Ca濃度は各井戸に到達する前に飽和平衡状態に達していることがわかった. このことから流動性の井戸水ではCO2分圧は石灰岩を構成する鉱物の溶解反応を促進していないと推定される. 3)滞留性の井戸では, Ca濃度が高いとCO2分圧も高い傾向がみられる. 4)滞留性のある井戸にはGL-30m以深の強滞留ゾーンが存在し, 強滞留ゾーンでは CaCO3+H2O+CO2 ⇔ Ca2++2HCO3- の化学反応が右方向に進行している. 5) 流動性の井戸と滞留性の井戸の比較から, CO2を貯留するには石灰岩の溶解反応が進む滞留性の井戸が望ましい. 6) SF6の年代決定率が30%台である. 7) 沖縄県のCFCs大気中濃度と北半球平均大気濃度を比較すると, 北半球平均大気濃度を1とした場合, CFC-12が0.88, CFC-11が0.93, CFC-113が1.78, SF6が1.07である. 8) 沖縄本島南部の琉球石灰岩帯水層内の不圧地下水の流動モデルは, 混合流モデルおよびピストン流モデルで近似される. ただし, SF6による年代決定率が低いので期間をおいて、再調査する必要がある.
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