研究課題/領域番号 |
15K14040
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
青木 伸一 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60159283)
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研究分担者 |
川崎 浩司 名城大学, 理工学部, その他 (20304024)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 造波装置 / 水理実験 / 数値波動水槽 / 津波 / 高潮 / 越流 |
研究実績の概要 |
津波や高潮に伴う非線形性の強い越流現象およびそれによる構造物の破壊現象を水理実験により明らかにするために,本研究では,新しい造波システムとして「自走式造波装置」を提案した.本装置は,造波装置がその位置を変えることにより水槽内の水位を任意に変化させ,同時に造波するものである.これを実現するための基礎的な研究として,数値波動水槽内に擬似的に自走式造波装置を実現し,種々の条件で造波することにより発生波の特性を考察した.また,造波に伴って水槽内で発生する振動の制御理論を構築し,その適用性を検討した. 本年度の研究では,自走式造波装置の特性を以下の4つの観点から検討した.(1)造波板の移動による水位変化と発生波の特性,(2)水路内に生じる長周期振動の特性と制御法,(3)越流実験における越流特性,(4)移動する造波板による短周期波の造波特性.(1)では,水路内の水位変化や発生波が造波板の移動距離,移動時間,水深によってどのように異なるかを調べた.(2)では,造波板の移動によって水路に発生する長周期振動の特性とその制御法について検討した.(3)では,越流実験における越流水深の制御について検討した.(4)では,移動速度を有する造波板によって造波された短周期波の特性変化について検討した.用いた数値計算法はCADMAS-SURF/3Dであり,造波板の移動については体積力型 Immersed Boundary 法で考慮した. 本研究で得られた知見は以下の通りである.(1)造波板の移動速度が大きくなると水槽内の水位上昇が一様でなくなり,長周期の振動が大きくなる.また短周期波の発生も大きくなる.(2)長周期振動の制御理論を構築したが適用性の問題が残った.(3)ゲート式造波に比べて越流水深を任意にコントロールできる.(4)移動する造波板で短周期波を造波するとドップラー効果により周期が変化する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水槽内で発生する長周期振動の制御理論の適用性については若干問題が残ったが,当初予定していた目的は概ね達成できた.また,今回用いた体積力型 Immersed Boundary 法を用いたCADMAS-SURF/3Dについても精度を向上させるために改良する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
水路内で発生する長周期波の制御については,インパルス応答関数を用いて理論構築は行なったものの,その適用性については,十分な結果が得られなかった.これは,低周波数域での造波特性を精度よく表現できないことに起因していると考えられる.今後はこの改善を目指す.また,実際の造波装置の実現に向けて,装置の設計に用いることのできる造波特性やパワーなどに関するデータの整理を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費の価格が変動したため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品費の購入に充てる.
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