研究課題/領域番号 |
15K14045
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
朝倉 康夫 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (80144319)
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研究分担者 |
井料 隆雅 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10362758)
日下部 貴彦 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (80604610)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 交通工学 / シェアリング / 相乗り / 交通行動分析 |
研究実績の概要 |
位置特定と通信・検索が容易に行える高機能な移動体通信機器を個人が携帯する社会では,乗客とドライバーが社会的ネットワークを通して直接お互いの素性を確認・了解したうえでマッチングが成立するような輸送サービスが登場しつつある.本研究は,複数の乗客が交通サービスを共有する次世代型相乗り輸送(Smart Ride Sharing, SRS)を対象に,マッチング問題としての定式化と数理的解析を行うことを目的としている.従来型の相乗り輸送やオンデマンド公共交通では想定されていなかった,乗客同士や乗客とドライバーの間の社会的ネットワークを介したリアルタイムの相互確認を前提とする新たな輸送サービスの成立メカニズムを明らかにしていく. 平成27年度は,既往研究と事例の体系的整理を踏まえて,SRSの数理モデルを構築した.社会的ネットワークでドライバーと乗客が相互了解したうえで,1台の車両に1名の乗客を割り当てるone-to-one マッチングのモデルを構築し,それを1台の車両に複数名の乗客が相乗りするone-to-manyマッチングモデルに展開するための基礎的検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究代表者と分担者の連携により, one-to-one マッチングのモデル化を行うことができた.1台の車両には1名の乗客しか乗らない場合を対象に,ドライバーと1名の乗客のマッチングモデルを定式化し,社会的ネットワークとして,乗客のドライバーに対する選好とドライバーの乗客に対する選好を仮定した最適マッチング問題を構築した.研究成果の一部を国際会議(The 11th Eastern Asia Society for Transportation Studies International Conference)にて発表し,Outstanding Poster Presentation Award を受賞した. さらに,構築したモデルを検証するために,タイのバンコックで実証実験を行い,行動データを収集した.これは当初の計画を上回る成果であり,当初計画以上に進展していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の計画は以下のとおりである. ①最適マッチングを達成するための解法,および最適マッチングが実現した時の解の持つ性質を明らかにする.解法については,理想的条件下での厳密な解法と一定の規模の問題に対応可能なメタヒューリスティックな方法を開発する. ②One-to-one マッチングモデルの解析方法を拡張し,one-to-manyマッチングモデルの解法を開発する.想定している出力は,ドライバーと乗客の社会属性の分布を与件としたときのマッチメイク後の効用分布の導出およびシステム効率性である. ③需要の多い都心部を想定したケースと,需要の少ない過疎地域を想定したケースのそれぞれについて,シミュレーション実験を行う.社会的ネットワークの支配力の強弱や,最適マッチングの規範の違いが輸送システムの効率性と利用者の効用水準に及ぼす影響を分析する. ④複数の想定されるマッチング概念を比較するとともに,次世代輸送システムとして機能するための条件整理を行う.
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