研究課題/領域番号 |
15K14047
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤井 聡 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80252469)
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研究分担者 |
神田 佑亮 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60636463)
宮川 愛由 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70598193)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 防災行政 / ナラティブ / リスクコミュニケーション |
研究実績の概要 |
本研究はナラティブをめぐる既往の諸学説を整理し,1)ナラティブ型言語活動の定義を理論的に明確化し,2)それを基層とした「ナラティブ型コミュニケーションツール」を開発し,3)公共政策における「リスクコミュニケーション」の領域にそれを適用し,その効果を実証的に検証することを通じて,ナラティブ型コミュニケーションの公共政策分野における実務的な応用可能性を検証するものである.今年度は自治体の防災担当者を対象としてナラティブ型コミュニケーションの有効性をインターネット調査を通じて検証した.その結果,ナラティブ性の高い情報提供によって防災に関する情報に移入しやすい傾向にあることが実証的に示された.また,地方自治体間における先進的な防災対策の波及に向けた具体策を検討するにあたり,これまで明らかにされていない,地方自治体の防災政策の参照実態,すなわち,他の自治体の防災政策がどの程度の頻度で,どのように参照されているのか,という実態について全国の地方自治体を対象とした概括的な調査を行い,防災政策波及に向けた知見と今後の課題を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナラティブを「活用」する試みを社会科学の方法論として展開するためには,その前提として人間の心的過程の一つとしてのナラティブを特徴づける内的な構造がより詳しく解明される必要がある.そこで,分野横断的に既往研究を調査し,その諸学説から,「ナラティブ型」の言語活動が他の型のそれと比較してどのような特徴を持っているのかを理論的に整理する必要がある.これまでに行った既往研究のレビューや心理実験を通じて,ナラティブの定義(類型,構造,性質等)が明らかになりつつある.具体的には,意図を持った主体が具体的にどのように行動したかが,目標達成-英雄物語型のプロットに沿って提示されているようなシナリオにおいて,ナラティブの効果が実証的に示された.
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今後の研究の推進方策 |
ナラティブの効果がリスクコミュニケーションにおいても発現するのであれば,不確実性の高い未来の「リスク情報」をリアリティをもって,人々に認識させ,自発的なリスク回避行動の喚起に繋がるものと期待される.今後は,明らかになりつつあるナラティブの定義に基づき,リスク情報を「ナラティブ型」で記述したリスクコミュニケーションにおける「ナラティブ型コミュニケーションツール」に向けた検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
調査補助に係る人件費・謝金を次年度に繰り越している.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に複数の調査の実施を予定しており,データ処理等の人件費としての支出を予定している.
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