昨年度は,重水素でラベルした凝集剤を用いて,凝集・膜ろ過実験を行い,膜を観察したが重水素/水素同位体比は変化せず,天然同位体比と同じであった.しなかった.そこで,本年度は,まず,凝集フロック自体をまず観察したが,同位体比は天然同位体比と同じであった.しかし,NaODを材料に作成したポリ塩化アルミニウムから生成した水酸化アルミニウムについては,天然同位体比の20倍の重水素が検出された.このことから,重水素を含む凝集剤は生成されたものの,凝集反応や膜ろ過中で,重水素が水素で置換され,元の同位体比に戻ったことが示唆された.また,塩化アルミニウム溶解法で作成したポリ塩化アルミニウムについても検討したが,結果は同じであった.一方,ポリ塩化アルミニウムをNaODで中和し生成した水酸化アルミニウムを膜で補足し,その後,膜を真空乾燥することで,より高い同位体比が得られた.このことは,膜の乾燥中にも空気中の水蒸気と重水素/水素の置換が進んでいるもとと思われた.そこで,重水素を含むポリ塩化アルミニウムを凝集剤に用いて,長時間の凝集膜ろ過実験を再度行い,ファウリング膜を回収し真空乾燥し,同位体顕微鏡で観察した.しかしながら,この場合でも,天然同位体比と異なる比の重水素カウントは得られなかった. 次に,実験方法を転換し,膜面上にファウリング物質である水酸化アルミニウムが蓄積した段階で,水素を重水素で置換すること試みた.膜ろ過を停止後,重水を循環ろ過し,最後に純水をろ過した.膜面を観察した結果,深度約10 μmの膜内部に比べて,膜表面は比が高い場所と低い場所が点在していた.比が高い場所は,重水素で置換された水酸化アルミニウムが多い部分があることを意味しているのかについては,今後,さらなる検討が必要である.
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