研究課題/領域番号 |
15K14054
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
船水 尚行 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10113622)
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研究分担者 |
伊藤 竜生 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70374577)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 尿資源利用 / 尿の濃縮 / 正浸透膜法 |
研究実績の概要 |
平成27年度は(1)実験に用いる人工尿の組成決定(尿の組成,浸透圧の測定),(2)ドロー溶液の設定,(3)正浸透過程における尿中成分の拡散,(4)多成分系正浸透プロセスのモデル式の設定の4項目を実施した. (1)実験に用いる人工尿の組成決定:通常の状態では,尿組成は個人差,同じ人でも時間帯によって大きく変動することが知られている.そのため,実験の再現性を高めるためにも人工尿の組成を決定する必要がある.多人数から尿の提供を受け,その組成を測定して,主要イオン,の尿素,有機物濃度の測定を行い,11種類の試薬を用いる人工尿の組成を決定した. (2)ドロー溶液の設定:砂糖の主成分であるスクロース,ならびに塩化ナトリウムをドロー溶液と設定し,実験に用いた.尿の濃縮倍率を5倍と想定したときに必要なドロー溶液の浸透圧を定め,その浸透圧を得るための濃度を決定した. (3)正浸透過程における尿中成分の拡散:正浸透では,浸透圧の差で水のみが膜を通過するのが理想的であるが,回収・濃縮したい尿中成分のうち膜を拡散してドロー溶液側に移動するものが予想される.そこで,尿中の主要成分について,それぞれの単独の溶液を作成し,正浸透過程における水移動量の測定に加え,拡散による移動を測定し,拡散係数の形で整理した.その結果,尿素が一番拡散しやすく,他のイオンと比較して,一桁拡散係数値が高いことが判明した.尿素が拡散によって移動することから,新鮮な尿より,尿素の加水分解させ,アンモニアの形にした後の尿を濃縮することの有用性が認められた. (4)多成分系正浸透プロセスのモデル式: 従来の正浸透プロセスを記述するモデルはドロー溶液中の一つの成分の濃度分極しか考慮しないものとなっており,尿の濃縮プロセスの記述には適していないことから,尿中成分の拡散も考慮した,多成分系の正浸透モデルを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は(1)実験に用いる人工尿の組成決定,(2)ドロー溶液の設定,(3)正浸透過程における尿中成分の拡散について,実験を行い,その結果を整理する計画であった.これらの検討が予想以上に進捗し,(4)多成分系正浸透プロセスのモデル式の検討に入ることができている.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画にあるように,28年度は多成分系正浸透プロセスのモデル化を行い,実験結果との検証を経て,モデルによる計算によって,多様な条件における尿の濃縮について検討し,正浸透法を尿の濃縮に用いる際の主要な条件の整理をおこなう. また,27年度の成果の国際会議発表を予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末において,所要額をすべて使用するという操作を行わないで,実験用消耗品の購入を行った.実験は予定通り進行し,実験用消耗品も予定通り使用した.実勢価格の変動等の関係から5,838円の残となった.この価格は誤差の範囲と認識している.
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次年度使用額の使用計画 |
28年度に使用する実験用消耗品の購入に充てる.
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