研究課題/領域番号 |
15K14055
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研究機関 | 国際連合大学サステイナビリティ高等研究所 |
研究代表者 |
真砂 佳史 国際連合大学サステイナビリティ高等研究所, サステイナビリティ高等研究所, リサーチフェロー (50507895)
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研究分担者 |
佐野 大輔 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80550368)
久保田 健吾 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80455807)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大腸菌 / 下水 |
研究実績の概要 |
手法:下水処理水の影響を受けている沿岸海域を対象として,塩耐性大腸菌の存在状況についての現地調査を行った。A下水処理場の流入下水と塩素添加前の下水処理水,および放流先海域11地点にて2015年8月と10月の2回水試料を採取した。大腸菌群数及び大腸菌数は選択培地(クロモカルト寒天培地ES)を用いて測定し,並行してこの培地に海水と同程度の塩化ナトリウムを添加した培地を用いて同様に培養,コロニー計数を行った。下水処理水と放流先のうち2地点で採取した試料(計3試料)については,培地上に形成した青紫色のコロニーを釣菌し,寒天培地および液体培地で順次培養することで菌株を単離した。 結果:流入下水および下水処理水は,8月,10月の調査ともに塩を添加した培地を用いるとコロニー数が約半分になった。一方,放流先海域で採取した試料については,8月の調査では塩を添加した培地の方が4.6倍(大腸菌が検出された8地点の幾何平均値を比較)高くなったのに対し,10月の調査では大小が逆転し,0.36倍となった。塩を添加しない培地で培養した(通常の)大腸菌数は2回の調査で同程度であったが,塩を添加した培地上に形成したコロニー数が10月の調査時は8月の10分の1以下となっており,これが影響したと考えられる。釣菌を実施した放流先海域2地点にて12月と2016年1月にも同様の調査を行ったところ,濃度が非常に低かったものの10月の結果と同様の傾向を示した。 考察:今年度は2回の全域調査と2回の追加調査を行った。塩添加が大腸菌数に与える影響については,2回の全域調査で異なる傾向がみられ,今後より詳細な調査が必要になると考えられた。また,単離した菌株の分子生物学的同定を進めているところであり,この結果を合わせることで放流先海域の大腸菌の挙動を示すことができると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下水処理水放流先海域において全域調査2回,追加調査2回の計4回の調査を実施することができ,塩添加培地による大腸菌計測数の変化について基礎的なデータを得ることができた。2回の調査で結果が相反したため,予定していた単離株の詳細な調査に代えて追加調査を行うことにしたが,単離株の解析も進めており,順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の現地調査により,大腸菌選択培地に塩を添加することにより計数値に変化があることがわかったが,増減の傾向は2回の調査で相反する結果となった。平成28年度は単離した大腸菌株の分子生物学的な解析を進めるべきと考える。舞台的には,16S rRNA遺伝子の塩基配列に基づく単離株の同定や,大腸菌に特有の遺伝子を対象としたPCRによる菌種判定などを考えている。塩耐性を持つ大腸菌が放流先海域に分布していることが確認された場合は,大腸菌が塩耐性を獲得する機序について室内実験にて調査し,大腸菌が放流先海域で塩耐性を獲得しうるかについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
8月及び10月に実施した現地調査の結果を受け,単離株についての詳細な解析を行う前に追加の現地調査を行うこととした。これに伴い単離株の解析を行うための研究費の執行が後ろにずれ,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
単離株の解析が予定より後ろにずれたものの,解析自体は順調に進めており,当初計画通りの調査を行う予定である。
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