研究課題/領域番号 |
15K14056
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
藤田 昌史 茨城大学, 工学部, 准教授 (60362084)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 微生物燃料電池 / 廃水 / 海水 / 酸素透過膜 / 窒素除去 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究計画では、1) 有機物の嫌気分解と硫黄酸化によるハイブリッド発電の機構解明と最適化、2) ガス透過膜の酸素の受動透過性能の評価の実施を予定していた。 1)については、3年以上海水添加条件下で都市下水を処理している活性汚泥を植種源として、都市下水と海水の混合比を変えた原水を用いて、エアカソード型微生物燃料電池排水処理装置を運転した。出力-電流曲線の結果より、都市下水+海水系(海水4%)の最大出力密度は7.1mW/m2であり、都市下水系(対照系)の0.0070mW/m2に比べて100倍高かった。海水を適切に投入することにより、MFCの内部抵抗が小さくなり、出力が大きく改善できるとわかった。次に、硫酸塩還元反応により生成する硫化物を利用して、外部から+0.3Vの印加により電力回収が可能か検討した。その結果、外部からの+0.3V印加が0.036mW/m2であったのに対し、発電量は25.6mW/m2が得られた。つまり、電圧印加によるエネルギー投入量よりも700倍以上高い出力が得られた。以上のことから、目的とした有機物分解と硫黄酸化によるハイブリッド発電は実現可能であることが示された。 2)については、有効容積1Lの酸素透過膜モジュールを作成し、8種類の異なる性質を持つシリコーン平膜を用いて、総括酸素移動容量を定量した。膜厚0.5mmの平膜のなかでは、最大1d-1程度の酸素の受動透過が可能であることが見出された。膜表面に硝化細菌が付着すれば、本実験条件よりも酸素濃度勾配が高くなることから、さらに総括酸素移動容量が高くなるものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画で予定していた二つの検討内容は問題なく実施することができ、順調に研究が進んでいる。当初は、中部太平洋の環礁国で広く普及しているSeptic Tankを想定して、本研究を着想した。一方、マーシャル諸島共和国などでは、トイレのフラッシュで利用した海水が生活排水に混入したものが、下水管を通じて未処理で海に放流されており、サンゴ礁破壊の原因として非常に問題視されている。本研究で得られる知見を応用すれば、下水管内での排水処理とエネルギー回収を同時に達成できる可能性があることから、最終年度は視野を広げて研究を総括したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度(最終年度)は、当初の計画どおり以下の二つの内容を検討する。 1) ガス透過膜を用いた硝化の最適化と硝酸イオンの電子受取による電力出力効率の評価 シリコーンチューブを浸漬させた排水処理装置に、海水存在下で集積した硝化細菌を植種して連続回分運転を行い、チューブに硝化細菌を付着させる。その後、チューブの有効表面積あたりの硝化速度を見積もる。最終的には陽極槽は陰極槽からの処理水を受け入れることから、この知見は陰極槽から陽極槽にかけての逐次反応が十分に進行するか判断するための重要な知見となる。 硝化反応で生成する硝酸イオンを陽極での電子受取に利用すれば、窒素除去が期待できる。しかし、熱力学的には酸素に比べて硝酸イオンの酸化還元電位は小さい。また、実際には理論値よりも多く損失が出ることから、ここではどの程度の出力低下があるか実験的に調べる。具体的には、陰極槽の検討で使用したMFC装置とその陽極槽にシリコーンチューブを浸漬させた陽極槽(最適化済)に置き換えた装置を用いて、電力出力を比較する。 2) エネルギー自立型排水処理装置のパフォーマンスとフィージビリティ評価 これまでの検討で得た知見を総括して、MFC装置を設計し処理運転を実施する。そして、有機物・窒素除去や電力出力の性能を評価するとともに、現地で処理効率を向上させるために導入する撹拌機の稼働に必要なエネルギーを確保可能か、また、既存のボトムレスSeptic tankに本手法を導入可能かなど、中部太平洋環礁への適用を想定したフィージビリティを評価する。
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